【第129話】土鍋ごはんと手づくりパン / 深井次郎エッセイ

ごはんとパンについて考える

それからは土鍋のことばかり考えて暮らした

ごはんもパンも
一生でたくさん食べるものだから
美味しくて体にいいものを
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食事は毎日のことなのに、知らないことがたくさんありそうです。ごはんとパンは食事のなかでも、毎日食べるものの代表選手。それなのに、ぼくはこの2つについて何も知らなかったようです。さいきん驚いたのが、ごはんは土鍋で炊くと美味しいし、パンはホームベカリーで自分でつくれるということです。そんなこと常識じゃないかと、だれでも知ってますよと言われましたが、そんなことをやってるのは一部の料理研究家な方々だけかと思っていました。

土鍋で炊いたごはんは、芯がしっかりしていて、立っている。まさにぼく好みの触感でした。麺はコシが命ですが、ごはんにもコシがあったのです。最近の高い炊飯器には「土鍋モード」のようなものがあるらしいですが、炊飯器って一度買ったらそんなに買い替えるものじゃありません。平気で10年使います。どうやら、ごはんの炊き方について立ち止まって考える機会を持たずにこの年まで来てしまったようです。

パンも、買うものと思い込んでいました。つくるという発想はありませんでした。小さなホームベーカリーでも、自分でつくると本格派なパンができます。スーパーで売ってる食パンとは全然違います。もちもちしてて耳はカリカリの食感。いつもはこれをこだわりのパン屋さんで焼きたてを買うしかなかったのに、自分でできてしまうとは。

いままでできなかったことができるようになるというのは、感動です。またひとつ自由になるのです。手間もそんなにかかりません。小麦粉を自分好みにブレンドして2時間ホームベーカリーに入れておくだけでいい。好みで全粒粉も混ぜたり、健康志向にもできます。しかも原価計算をしたら、食パン一斤120円ほどでできるようです。スーパーで買うより安い。米でパンができる「ゴパン」も話題になりましたが、ホームベーカリーは自分には関係のないものだと、たいして興味をもつこともありませんでした。これはみなさんハマるわけだ。おいしいもん。

というわけで、いま土鍋とホームベーカリーを買うかどうか悩んでいます。モノを増やしたくないので、ずっと使い続けないものを一時のノリだけで買いたくはありません。もう少し研究してみます。どうせ買うなら、良いものを買いたいので。ホームベーカリーの見た目が炊飯器とか洗濯機みたいで、家電っぽくていまいちです。あとこわいのは、美味しすぎて食べ過ぎることです。炭水化物は減らしたいのに。

 

(約947字)

Photo: Erich Ferdinand


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。