TOOLS 10 うつわの選び方 / 中村真美(ものづくり作家)

バニラアイスもひときわ繊細に、美味しくいただけます。

バニラアイスもひときわ繊細に、美味しくいただけます。

暮らしを愛することにつながっていく、うつわについて

TOOLS  10

うつわの選び方
中村 真美 ( 雑貨販売職 )

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自由に生きるために
「うつわ」を選ぶことで、なりたい自分を決めよう

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イタリアンレストランで使われるパスタ皿にもいろいろなものがあります。薄く白い緊張した面持ちのお皿から、イタリアの家庭料理をおいしく楽しくいただけるような、ぽってりした厚みに色とりどりの筆で描かれたあざやかなお皿まで、実に様々です。薄く白いパスタ皿は、料理の味に集中して、繊細さや緊張感を楽しんだり、また、ぽってりしたあざやかなお皿からは、ゆったりとした黄金色の麦畑を思わせるような豊潤な感覚を楽しむことができます。

例えば、5種類のパスタ皿があったとするなら、同じカルボナーラであっても、お皿によって5種類の感覚のカルボナーラを選ぶことができます。だからと言ってたくさんのお皿を買う必要はないですが、毎日使える、自分らしいとっておきのお皿をひとつ選んでみてはいかがでしょうか? 私たちは、知らず知らずのうちに、料理と一体となる額縁のような存在である「うつわ」に知らず知らずのうちに影響を受けています。

 

食器棚を覗いてみた

私が持っている大好きな「うつわ」のひとつに英国のブリッジウォーター(現 エマ ブリッジウォーター)の、ポルカドットという柄のカフェオレボウルがあります。ぽってりした使いやすい形、クリーム色の陶器の素地にカラフルなドットの模様が施されています。職人たちの手によって、スポンジのようなもので判を押しているため、ドットのひとつひとつに濃淡が生まれており、そこに優しい味わいがあります。昔、ある雑誌に掲載されていたこのカフェオレボウルに一目惚れして、生活の一部に加えることにしたのです。

私は、カフェオレは飲めないので、シチューを食べたり、コーンフレークを食べたりと、いろいろな使い方をしています。なにげない夜も、なんだか気分が沈んだ朝でも、このうつわのカラフルな優しいドット柄をみていると元気が出てくるのです。私の生活を陰ながら支えてくれているうつわなのです。そして、のちのち、このカフェオレボウルを売っていた雑貨店で働くことになり、そこで大きく学びを得るきっかけとなった思い出深いうつわでもあります。このポルカドットはカラフルでかわいい、どちらかというと主張が強いタイプのうつわではあるが、逆にシンプルなうつわも違った良さがあるのです。

朝はこのカフェオレボウルで元気良くスタート

朝はこのカフェオレボウルで元気良くスタート


作家さんのうつわの生命力

2013年の5月に、松本のクラフトフェアで、西山芳浩さんという作家さんのガラスのうつわたちに出会いました。南極の氷からつくったような、どっしりとしたグラスも、透明感があり、すごく素敵だったし、淡い黄色や藤色の繊細なグラスも素敵でした。

どれにしようか必死に悩んでいたところ、まるでうつわたちのお父さんかのように、西山さんご本人が作品の説明をしてくれたのです。その話ぶりから、ご自身の仕事への愛情を感じました。長い時間なやんだのち、透明なガラスでつくられた、たまご型のお皿と一輪指しの花器を選びました。このたまご型のお皿はゆったりとしてシンプル。なんとも心地の良いお皿なのです。苺を盛ってみたり、サラダを盛ってみたり。ガラスの透明感が苺の赤や、野菜の緑を引き立てて、更にみずみずしくみせてくれます。ことさら、このお皿はゆらぎが大きく美しい。

作家さんのうつわのよいところは、生命力と人ならではの創造物の美しさがあるところ、ではないかと思います。毎日違う表情があるように見えるのです。そして、このうつわを使うたび、ふと、うつわのお父さんのようだった西山さんのことも思い出され、思わずにっこりしてしまいます。


「もの」に執着せず、自由に選ぶことを楽しむ

ここで伝えたいことは、うつわという「もの」に執着することではないのです。人の一生は、一日一日から成り立っているもの。その大切な一日一日を過ごして行くために構成している要素は自分で決められるものなのです。その自由に、たくさんの人が気付いて、楽しんで欲しいと思います。ことさら、食は生命維持のために必要不可欠であるため、「うつわ」は毎日必ずといって目にするものです。まずはそこから意識して選んでみませんか?

 

どんな自分になりたいですか?

自分がうつわを使ってみるところを想像して、なりたい自分が想像できたら素敵です。ぜひ、そんなうつわをみつけてみてください。私は、人の手とあたたかさが感じられるような、うつわに魅力を感じます。小さな子どもであれば、大好きなキャラクター柄のうつわが一番元気になれるものかもしれません。それもまた、素晴らしいことです。ひとりひとりが、自分らしいうつわを選び、食事をとることは、自分の暮らしを愛することにつながっていきます。そして暮らしを愛するひとにとって、毎日はきっといきいきとしたものになるのではないかと思います。それがまわりの人にも伝わって豊かであたたかな輪が広がっていくのではないでしょうか。

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うつわの選びかた 

1.  素材、大きさ、フォルム、重さ、色、柄、そして手になじむかどうかをチェック
2.  食べたいものがおいしく見えるかどうか想像してみる
3.  なりたい自分、使っている自分を想像してみる

 


中村真美

中村真美

ものづくり作家。学生時代より手づくり作品をフリーマーケットやデザイン展で売りはじめる。デザイン会社を経て、雑貨販売職、店長として、和から洋まで暮らしに関わる雑貨のお店に、関東や関西にて10年ほど勤務した。生きていくことの光の部分と影の部分を意識することで、日々の暮らしを大事にしていくことを、暮らしのものを通じて提案することで、あたたかい世の中にしていきたい。また、ビーチクリーン(海岸清掃)のグループを立ち上げ、活動中。beachclean:http://maminaka.wix.com/beachclean