TOOLS 68 子どもの情緒を安定させるアイテム <BOOK 編> / 諸星 久美( 小説家 / エッセイスト )

絵本ヒーローの数に比例して、各ヒーローの持ち技などを読んでいくと、かなり長い時間になるのですが、よく集中して聞いているので、私の方が集中切れして、「今日はダイナまでね」と読み聞かせを終了させてもらうことも多くありました。それはそれで、彼の本との関わりかたなのだろう
TOOLS 68
子どもの情緒を安定させるアイテム(BOOK 編 )
諸星 久美  ( 小説家  /  エッセイスト )

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自由に生きるために
好きなものを増やしていこう

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前回の音楽編に引き続き、今回は情緒を安定させるアイテムとして、諸星家の子育てを援助してくれている大切な「本」というものについてお話したいと思います。

私が幼少の頃は、母が保育士ということもあり、家の本棚には多くの絵本がありました。

本を開くということ。絵を見て物語を追っていくということ。物語の中に入り込み、別の世界の時間を生きるということ。そんな楽しみを、身近に本があることで自然と会得することができたと、母に感謝しています。

大人になり、私自身も保育士として幼稚園に勤めるようになったことで、自分のクラスの子どもたちに読んで聞かせるため、たくさんの絵本を購入しました。そのこともあり、長男の育児スタート時には、母から譲り受けたものと、私が購入したたくさんの絵本が身近にある、という環境をつくることができたと思っています。

私が幼少の頃お気に入りだった本は、子どもたちも好き

私が幼少の頃お気に入りだった本は、子どもたちも好き

 

 

長男の好みは電車戦国武将

 

好奇心旺盛な長男は、じっとしている時間は少ないものの、絵本には興味を持ち、小さな頃から読み聞かせを楽しんでいました。

まずは私が選んだものを読み聞かせ、視覚から興味をひくために、手に届く位置に飾るようにして絵本を並べました。小さな頃は上手くめくれずに、ページが破けてしまうことも多いですが、そこは我慢。大切に保管するよりもたくさん触れて欲しい、という思いで、好きなようにさせていました(図書館から借りた本の破損はNGなので、そこは気をつけていました)。

長男が何度もせがんだ『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう」』

長男が何度もせがんだ『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう」』

車よりも電車好きでプラレール収集をしていた彼の大好きな本は、『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』バージニア・リー・バートン作。中の絵は白黒でカラフルではないのですが、きかんしゃのちゅうちゅうが、人や荷物を運ぶ仕事から逃げ出して、街で大騒動を巻き起こすストーリーと絵が気に入ったのか、彼は、「これ読んで」「これ読んで」と何度もせがんできました。

とても長い物語で、私の口内がぱさぱさになることもありましたが、何度も、何度もが功を奏してか、彼は文字が書けない頃より、『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』を丸暗記して、じいじやばあば、弟の前で読み聞かせをしては、皆を楽しませてくれました。

また、はまるととことんの性格から、小学3年の頃は戦国武将にはまり、コミック版戦国人物伝を読みあさり、『群雄ビジュアル百科 戦国武将』をめくったり、戦国武将カルタで遊ぶ中、武将データの取得を楽しんでいました。その影響からか、現在でも、映画『のぼうの城』や『清須会議』は好んで何度も鑑賞しています。

 

 

次男はヒーロー図鑑データ

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ところが次男君は、絵本の読み聞かせにはあまり関心を示さず、ウルトラマンの人形収集をしていたこともあり、はまったものは『全ウルトラマン パーフェクト超百科』というウルトラヒーロー大集合の図鑑。「これ読んで」と持ってくるたびに、私は「ウルトラセブン、身長ミクロ~40m、体重0~3万5千トン、M78星雲の恒点観測員340号として、惑星軌道図を作成するためにやってきたが…」と、数々のヒーローのデータを彼に読み聞かせました。ヒーローの数に比例して、各ヒーローの持ち技などを読んでいくと、かなり長い時間になるのですが、よく集中して聞いているので、私の方が集中切れして、「今日はダイナまでね」と読み聞かせを終了させてもらうことも多くありました。

バスケ雑誌、2月号表紙はS・カリーと八村塁君

バスケ雑誌、2月号表紙はS・カリーと八村塁君

図鑑よりも絵本にもっと興味を持ってほしいな、という思いもありましたが、自分で図鑑の中に入り込み、データを読みとり記憶するということを好む次男君は、現在は『DUNKSHOOT」『月刊バスケットボール』というバスケ雑誌を毎号食い入るように見て、我が家では一番の選手データを誇る男の子になったので、それはそれで、彼の本との関わりかたなのだろうと感じています。

 

 

長女は水を飲むように本を読む

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そして、一番下の長女はどんなジャンルの本でも片っ端から手にとり、何かを飲むように読んでいく女の子。週末になると一緒に図書館へでかけ、重たい思いををしながら持ち帰るたくさんの絵本を、「ママ、もう全部読んじゃった」と、その日のうちに言ってきます。

「すごいね~」と言いながらも、「あんなに重かったのに、もう…?」という情けない思いを醸し出す未熟者の私の思いをくみ取ってか、「大丈夫、気に入ったものは何度も読むから」という発言通りに、彼女はお気に入りの本を何度も音読で読んでくれるので、私は家事をしながら彼女の読み聞かせを楽しむことができます。

私の祖母(長女にとっては曾おばあちゃん)が寝たきりになってしまった頃には、まだ彼女は幼稚園年中児でしたが、本に親しみ、自分で読むことも楽しめる子でしたので、いろんな絵本を祖母のベッドの脇に持参し、祖母の耳元で読み聞かせをしてくれました。

祖母は93歳で老衰で他界しましたが、4歳の彼女が物語を読む声は、さまざまな機能が低下していく中でも、ちゃんと耳に届いていただろうと、彼女の本好きが生んだ祖母との時間を、本当にありがたく感じています。

また、先日学校で長女の名札がなくなり、先生や友だちが探したところ、廊下の消火器の裏に落ちていた、というハプニングがありました。それは隠されたのだろうと思いながらも、一応フォローのつもりで、「どっかで落ちて、誰かが間違えて蹴って、そこにいっちゃったのかもね」なんて言う私に、「それはないと思う。人が持って行かないとあそこには入らないと思う」と返す長女。「でも、先生が誰がやったのか聞いてくれたし、『次にこういうことがあったら、先生が許しません』って言ってくれたから、もう大丈夫」とさらりと言い切る姿に、たくさんの本と出会いが、彼女の中に多くの学びをもたらしているのだろう、と嬉しく感じたものでした。

図書館で借りた本

図書館で借りた本

 

 

本が情緒を育む

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私自身、多くの本の中で出会ってきた大切な言葉、本の中で出会った素敵な人の生き方から、私自身を形成してきたという思いがあります。

一文に救われ、一作品に迷いを飛ばしてもらったこともありますので、3人の子どもたちにも、各々の楽しみ方、各々のセレクトで本と出会い、多くのことを吸収してもらえたら嬉しいと思います。

現在、長男、次男はあまり本を読まなくなり、漫画やバスケ雑誌三昧ですが、セレクトするものを強制することなく、手の伸ばせるところに色々な本を置き、必要になった時や読みたい時期がくることを待とうと思っています。

本をめくる1人時間を重ねることが、情緒の安定に繋がると信じて、また、私の出会った本、私の読み返してきた大切な一冊が、いつか成長した子どもたちの本棚に収まる日がくることを夢想して、私はこれからも良書との出会いを求めていくことでしょう。

私の1月の出会い本

私の1月の出会い本

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子どもの情緒安定に必要なアイテムを手に入れるために(BOOK 編)
1.  身近に様々な本を置く、飾る
2.  「これ読んで」にできる限り応じる
3.  親自身も本に親しみ、読書する姿を見せる


PHOTO : Gustav Klim(一枚目),その他、筆者本人


諸星久美

諸星久美

(もろほし くみ)小説家、エッセイスト。1975年8月11日 東京生まれ。東京家政大学短期大学部保育科卒業後、幼稚園勤務を経て結婚。自費出版著書『Snowdome』を執筆し、IID世田谷ものづくり学校内「スノードーム美術館」に置いてもらうなど自ら営業活動も行う。またインディーズ文芸創作誌『Witchenkare』に寄稿したり、東京国際文芸フェスティバルで選書イベントを企画するなど「書くことが出会いを生み、人生を豊かにしてくれている!」という想いを抱いて日々を生きる、3児の母。2017年8月25日、センジュ出版より『千住クレイジーボーイズ』ノベライズ本出版。オーディナリー編集部所属。