【第163話】多数決は地球を救うか / 深井次郎エッセイ

「決まりだね」「え?」

「みなさーん、決まりですね」 「え?」

多数決は子どもを生きにくくする
数以外の決め方が必要

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団塊の世代をピークに、子どもの数が減りつづけています。その中で、いまだに世の中は多数決。数の力で動いています。このまま多数決ですべてが決まっていくと、少数派はますます生きにくくなります。つまり、子どもが生きにくい社会になるということです。さらに子どもを生む親が減ると、子どもたちに思いを馳せる大人が減っていきます。普段の生活で子どもに接することもなくなりますから、子どものことを考えなくなります。すると当然、自分たち大人に都合の良いような政策ばかりであふれていきます。

子どもを増やせ、ということではありません。このまま、減ってもいい。そこは自然に任せるしかない。いま地球上には人間が増えすぎたように思えます。これ以上、自然を犠牲にしながら産めよ増やせよは、人間のエゴでしかありません。生態系をこれ以上壊してはいけない。

いま子どもを増やせというのは、結局、大人が良い思いをしたいだけです。年金や労働力を維持して、今まで通りの金銭的豊かさを失わないようにするためです。子どもから搾取し、自分たち老人を支えてもらうためです。

もう多数決ですべてを決めるのをやめませんか。子どもたちは、どんなに団結したって少数派なのです。いまのシステムでは、若者に革命は起こせない。追いつめられるだけです。少子化社会とは、子どもがいない社会です。子どもの扱いに慣れていない大人があふれる社会です。「子どもってなんだっけ?」と非常に珍しい存在になります。すると大人特有の保守的な尺度に子どもを閉じ込めます。数々の「常識」と「前例」で監視されるのです。

だれもが、みんなかつて子どもだったのです。子どもがどういう社会でのびのびできるか、もう一度考えてみよう。子どもについて考えることは、未来について考えることです。100年後なんて自分は生きてないから関係ない? 頼むからそんなダサいこと言うのやめませんか。未来に問題を残すのをやめませんか。

多数決をとったら、大人に優位で進みます。「今さえ良ければ良い」「自分たちが生き延びられれば良い」そんな結論になってしまいます。もちろん、多数決は便利です。すぐに結論が出るので、スピーディーにものごとを進められます。でもいま多数決で進みすぎて、ひずみが出ています。

かつてネイティブアメリカンは、7代先のことを考えてものごとを決めたと言われます。そして多数決の投票ではなく、一定の合意があるまでチームの代表たちが徹底的に話し合ったのです。集会場に明かりを灯し続け、いったん家に帰ってごはんを食べてきたりして、何日も何日も話し合いました。子どものことを考えるのは、もういちど地球について考えることです。文化と自然を大切に残すことを考えていきたいのです。

(約1087字)

Photo: Liam Quinn


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。