【第164話】年甲斐もなく続けたい / 深井次郎エッセイ

「60歳まで続けるぜ」「え!」

「70歳まで続けるぜ」「んあ!」

最年長を応援しよう
みんなが長く続けられるために

ーーー

趣味のバスケを何歳まで続けられるか。それが問題です。バスケが好きなので、できれば生涯現役で続けていきたいのです。でも、まわりのプレイヤーを見渡すと、せいぜい40代半ばまでしか会ったことがありません。ゴルフやランニングや登山や釣りであれば、80代プレイヤーもいます。いつかぼくも、バスケを引退し、違うスポーツに移行しないといけないのか。

バスケが一番楽しいスポーツだと思ってます。あれだけ大きなボールを小さなリングに遠くから入れる。理屈で考えたら無理でしょう。でも、人間はできちゃうんですね。人間すげーって、感動します。もちろんバスケは背の高い人が圧倒的に有利という理不尽さもありますが、それも人生。もともと人生とは理不尽なものだよなぁと悟る、いい機会です。「不平等なこの人生で自分はいかにして生きるのか」それを思考するきっかけになるし、哲学者になれる。

プレイヤーとしての去り際を考えると、34歳の今から寂しくなるのです。あと何年、あと何回ゲームができるのだろう。いまだって、バスケ界では十分おっさんプレイヤーです。やっぱり20代が中心です。現役でやってる学生がいたり、たまに高校生も練習に参加したりする。ひえー、若者はすごい走るなぁと、まず運動量で全然かなわない。

「年齢なんて関係ないですよ、気にしないで」普段、そう言ってるぼくも、まわりを気にするのですね。「へいへい、おっさんのくせに無理しちゃって」とまわりに思われていないだろうか。そういう空気を読んでしまうところもあるのです。

そんなところにこの間、びっくりしたんですけど、体育館に67歳のバスケプレイヤーが現れました。「たのもう」と道場破りみたいなノリで。体も太ってなくて、ランナーのように無駄な贅肉がない。人間は細いと若く見えますね。最初50代かと思いました。もちろん年なので動きもちょっと遅く、パワーもないけど、若者の足を引っぱらずゲームに参加できてるのです。50代プレイヤーだって見たことないのに、60代、しかももうすぐ70代じゃないですか。ぼくは嬉しくなりました。「やっていいんだ」と思った。

年齢で引退を決めなくてもいいかな。カズ選手もサッカーを楽しそうに、もうすぐ50歳になるけど続けています。アマの話とプロの話をいっしょに語るのはおこがましいですが、自分よりも年上プレイヤーがいてくれるというのは、「やっていいんだ」と安心するものです。

多くの人が「年甲斐もなく」という言葉を恐れます。本当は続けたいのに、引退してしまうものです。ミニスカートもそうかもしれない。年齢は関係ない。はける実力があるなら、はけばいいんです。

最年長プレイヤーは偉大です。業界で考えてもプレー人口を増やす効果があります。カズ選手の存在のおかげで、フットサルプレイヤーの年齢層は上がったのではないでしょうか。いろんなジャンルの最年長の人にお願いです。あなたの存在が多くのプレイヤーの寿命を伸ばしています。どうか、限界まで続けていただけるよう。
(あれ、この話、前にも書いたっけ?)

ーーー

【ペプシのCM】
じいちゃんがストリートバスケに乗り込んだ動画。このくらいの年まで続けられたらいいな。

(約1235字)

Photo: Juan Carlos Labarca


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。