TOOLS 30 はじめてのZINEづくり / Nanae(ナナエ)グラフィックデザイナー

zine

初めての、自分100%の本。こんなに嬉しいものなんだ! 文章や、イラスト、そして写真など、何か自分の中にうずまくものを、世の中に発信してみたい。でも、入り口がわからないし、いきなり出版社に行く勇気もない… なんて、そんなモヤモヤしていた私のような人達にZINEという素敵な形もあります!
はじめてのZINEづくり
Nanae ( グラフィックデザイナー )

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自由に生きるために
果てしなく自由な表現ツール、ZINE(ジン)で発信しよう

 

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初めまして、ナナエです。普段はデザイン会社に勤めている、グラフィックデザイナーです。私はイラストを描くことが好きで、それを生かした表現活動がしたいという漠然とした思いがありました。でも、思いはあってもアテもツテもない。ひとまず、自分のイラストレーションWebサイトを作ってみました。作品を増やして行くことも大切だけど、次に何をするか考えていた時に、ふと友達からZINEという面白いカルチャーがある、と教えてもらったんです。

ZINE。忘れていた記憶がふっと蘇りました。自由大学へ初めて足を踏み入れた頃、社内起業学望月暢彦教授に、貴方みたいな人にはこういう世界がある、と教えて頂いたことがあった。友達の言葉で思い出した私は、すぐにZINEのことを調べました。

ZINEとは : 出版社や街の本屋とは関係なく、自由に作れる自主制作出版物のこと

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写真集、アートブック、フリーペーパー、同人誌、小説、絵本、イラスト集 etc … 。ジャンルは多岐にわたり、自分の思いを詰め込んで、プリントして、ホチキスでとめれば完成。発端は1980年代後半から90年代前半頃、アメリカ西海岸のスケーター達が彼らの表現したい情報などを書いたものをプリントして、自分達の手で流通させたのが始まり。

今の私に、なんてぴったりのものだろう…! 一冊作れば、色んな側面も見えて勉強になるだろうし、ポートフォリオ(プレゼンするための自己作品集)にもなる。

これは絶対作りたい… そう思った瞬間からいろんな歯車が動きだし、運良くZINEの専門店「MOUNT ZINE」さんが主催する、初心者に向けたZINEスクールが開催することを知り、参加することになりました。そして2014年夏の終わりに、いよいよZINEスクールに通うことになったのです。

 

zineづくり

 

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作り方を学びに行った
待ちに待ったZINEスクール
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授業は全4回です。

第1回目 8/30(土)「自己紹介&ZINEの構想を練ろう」
第2回目 9/13(土)「ZINEをデザインしよう」
第3回目 9/27(土)「紙選びと印刷・製本を学ぼう」
第4回目 10/11(土)「ZINEを持ち寄り発表しよう」

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第1回目 「自己紹介&ZINEの構想を練ろう」

初日は自己紹介とZINEについての座学、ベーシックな作り方の説明を受け、自分の作りたいZINEについての構想と、①台割と②ダミー本の作成が宿題として出されました。(ZINEスクールは実作業は自宅作業で、スクール自体は座学と公表会となります。)

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ZINEの台割とは

 

事前に掲載予定の素材などがあれば持参するように言われていたので、私はおよその構想を持って、皆さんの前で発表しました。私のやりたいこと、それは…「切り取って使える紙雑貨 BOOK」(最初の頃はまだ、切り取りメモBOOKと名付けています)

型紙を切り取り、折ったり貼ったりするだけで「紙もの雑貨」が出来るZINE。封筒レターやカードメモ…etc。

私は漫画がとても好きで、小学生の頃『りぼん』や『なかよし』といった、月刊の漫画雑誌を愛読していました。そこで付録としてついていたのが、かわいいノートや自分で作れる紙BOXや切り取りメモ。大好きな作品の絵がデザインされた付録を、いつも楽しみにしていました。こういうものを作りたい。小説や写真、イラスト集でもないけど、自分の一番やりたいことを詰め込もう! そう決めていました。

スクール部長を勤めている大津ゆかりさんにも、いいね! と後押ししていただき、ちらばった構想を2週間後の提出に間に合わすべく、始動していきました。受講に来た人たちは全員で13名。学生から会社にお勤めの方、主婦の方まで、年齢もバッググラウンドも様々。もちろん作りたいZINEの内容も様々でした。写真集であったり、旅行記、イラスト集、詩集、自分のお店のZINEを作りたい人等、様々。

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ZINEづくりスクール

会社と家の往復だったら出会わなかったであろう人たちとの出会いは、とても刺激になりました

 

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第2回目 「ZINEをデザインしよう」

第1回目に宿題として出された台割とダミー本を持参し、どんなZINEにするか各自発表し、主催の櫻井史樹さん、部長の大津ゆかりさんから個別に修正点や改善ポイントなど、アドバイスをして頂きました…と、言いつつ。実は私はこの第2回目の授業を、所用により受講することが出来ませんでした…。予め行けないことがわかっていたので大津さんに相談した所、メールでの提出でも大丈夫と言っていただき、私はメールで個別にアドバイスを頂きました。

しかし、ここで私は改めて気がつきます。理想の構想はあれど、これは期間中に完成できないのでは!? と…。

イラストを作成するだけでなく、紙雑貨達の展開図面も考えなきゃいけない。普段は会社勤めをしていますので、2週間といえど本当に時間がないことに改めて気がつきました。考えた結果、このZINEの為にイラストを全部書き下ろそうと思っていましたが、予め描きためていたイラストを元に作成することにしました。「大変ならば本屋さんなどで売っている素材集(飾り枠など)を自分で描いたものと混ぜて、うまく利用して制作するといいですよ」とのアドバイスも頂き、なんとかまとめあげることができました。

その時の台割がこちら ↓

ZINEの台割 B

そしてダミー本です ↓

プリント

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第3回目 「紙選びと印刷・製本を学ぼう」

第2回目の授業で受けた講評を元に、ブラッシュアップした最終的なダミー本を発表し、印刷や紙選びに関して具体的に決めていきました。本来なら完成品に近いダミー本を作成する予定だったんですが、私は見事に間に合わず、白紙状態のページもまばらにありながらのダミー本を発表しました。

アドバイスとして頂いたことは、
①タイトルが地味なので、「もっと目立つ、わかりやすいものを」
②紙の厚さは切り取って使うメモなので、上質紙の割と厚めの紙が良い、とのこと。

①タイトルは「切り取って使える紙雑貨 BOOK」と小さく入れていただけだったので、このコピーを副題にし、メインタイトルとして「Nanae’s Paper book」と大きく入れることにしました。

 

NanaeのZINE プリント

タイトルを目立つようにしました

 

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②紙は相談の元、「上質紙の120g」にしました。補足としまして、私はベーシックな上質紙を選びましたが、トレーシングペーパーや色紙、いろんなジャンルの紙を使用していいのです。ZINEの素晴らしい所の一つとして、少部数ゆえいろんな紙で遊べることが挙げられます。

印刷に関しては、私はパソコンで作っていたので、基本データ入稿。家庭用プリンターで出力するか、印刷屋さんに出すかで悩んでいたのですが、時間がないのと展開図面ゆえ、表面と裏面の切り取り線がズレてはいけないので、精巧に合うよう印刷屋さんに出すことを決めました。

私が利用した印刷屋は「印刷の通販グラフィック」さん。応対も優しく、私の作るZINEにとっては印刷屋さんの中で一番お財布に優しかったです。他にもセルフで作業できる「キンコーズ」や、「セブンイレブンネットプリント」など、自分で製本する場合はこちらを利用するのが安価で作る事が出来るのでオススメです。

私は今回利用しなかったですが、2色印刷や、トレーシングペーパーなど特殊紙に印刷する時などは、「プリンティックDIY」さんが大変便利だそうです。私も次回、利用してみたい印刷屋さんです。

ここではほんの少ししか伝えられないですが、制作や印刷や紙について、沢山の知識をスクールでは教えて下さいます。知識がなくても大丈夫。むしろそういう人ほど、このスクールは歓迎なはずです。

同期のスクール生の作品もほぼ完成していて、多彩なZINEを前にわくわくしつつ、この時も私はスケジュールに間に合わないのではないかと、ものすごく焦りを感じていました…。

 

第4回目 「ZINEを持ち寄り発表しよう」

第3回目の授業を終えてからの2週間は本当に大変でした。会社勤めの後、夜にZINEのデータを作成するという、自分にとってはかなりのfullタイム生活。それでも完成できたのは「好きなことだから」の一言に尽きたと思います。

入稿データが完成したのは提出日の5日前。急いで印刷屋さんに入稿しに行きました。直接データを会社に持ち込んだので、直前の修正箇所もチェックでき、発表日に配送も間に合うことも確認。ドキドキしながら完成品を待つことになりました。

そして発表前ギリギリに自宅にZINEが到着。自分で試作をひとつひとつ作り、細かい修正点を感じつつも、1冊の本が完成したことに深い喜びとともに、どっと安堵が体中を巡りました。

『初めての、自分100%の本。こんなに嬉しいものなんだ…!』

完成したZINEを持って、無事発表会を終えました。

タイトルは「Nanae’s Paper book 切り取って使える紙雑貨BOOK」

Nanaeのzine

完成しました!

nanaeのzine

ミニ封筒レターやカードメモ

zineづくり

スクールの皆さんにできあがった作品を披露する筆者 Nanae

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型紙を切り取り、折ったり貼ったりするだけで「紙もの雑貨」が出来るZINEです。ミニ封筒レターやカードメモ。身近で使用できるアイテムを作成しました。

皆さんの作品も素晴らしい完成品になっていて、自分で作ったわけではないのに、経過プロセスを見ているのでそれぞれに感動しました。

そしていよいよ、ZINEスクールの特典として、

京都:京都市勧業館「みやこめっせ」2014年10月25日(土)26日(日)
東京:MOUNT ZINE8「ハチキュウゼロ」2014年11月15日(土)16日(日)
台湾:MOUNT ZINE in 台湾台北「田園都市藝文空間」2015年3月6日(金)7日(土)8日(日)

にて出品される運びとなりました。


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売ってみた!
緊張と感激の販売体験
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東京:MOUNT ZINE8「ハチキュウゼロ」 11月15日(土)16日(日)

京都の京都市勧業館「みやこめっせ」で開かれたイベントには参加することは出来ませんでしたが、沢山の人が足を止めては見てくれたそうです。そしていよいよ東京「MOUNT ZINE8」の開催日。自分の本がお店に並ぶという初めての体験に、ワクワクしつつ、誰にも見てもらえなかったらどうしようという不安で心が入り乱れていました。Facebookで告知をさせて頂いたんですが、結果、友人知人が実際に足を運んでお店に来てくれて。本当に感謝の言葉しか出なかったです。私に直接言わず、後日こっそり買って来た方も。こうして私のZINEを買ってくれた人に、いつか必ず恩返しをしたいと胸に誓いました。

お店は寒い中、本当に沢山の人が集まりとても盛況でした。大学生風の若い人達から、ご近所に住んでいるような初老の人まで、色んな世代の人がお店に来ていました。ZINEというムーブメントの大きさを、改めて目のあたりに感じました。
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東京:自由大学祭「自分の本をつくる方法」ブースにてZINE販売  11月2日(土)

そしてORDINARY発行人であり、私にとっては先生である自由大学「自分の本をつくる方法」教授の深井次郎さんの計らいにより、自由大学祭で、ZINEを販売させて頂くことになりました。夏の終わりから「初めて」を沢山経験してきましたが、自分で手売りをするという、やったことのない未知の領域の連続におののきながらも、この状況をかみしめるべく、出展させて頂きました。貴重な機会を与えて下さって本当に感謝しています。

結果として自分の手で売ることにより、今まで見えなかった気づきを得る事となりました。

・「売ること」の意識
・買手のニーズとターゲット
・展望と夢

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今回作ったこのZINEは、今の私を見つめて、自分がやりたいと思うことを100%詰め込みました。エゴが強い本と言っても過言ではありません。買手のニーズやターゲットの購買層など、セールスを意識せず好きなように作りました。

よって、買手としては分かりづらい部分が多々あることに、手売りして実感しました。「このZINEを切り貼りすると、こういう紙雑貨が作れます」というサンプルを店頭にて置いて販売したんですが、途中経過の折り方などを詳しく説明書きしていないので、作るのが難しい図案がいくつか発生しました。それから見た目の美しさを優先し、「切り取り線」を薄い色の線にしてしまった為、大人でも切り取りづらい。子供の小さな手では、とても難しいということに直面しました。

自分のイラストは誰に合っているのか、どういう人に向けたら受けるのか。自分の頭の中ではぼんやりと、女性、そして小学生ぐらいの子供にも手を取ってもらえたらいいなあと考えてはいましたが、「売る」ことを考えると、もう少しこの点について深くリサーチするべきだったと思いました。それから自分のHPやFacebookでの宣伝も貪欲にやること。表に立つ事を恐れてはいけませんね。

そして自分のZINEを手に取ってくれるのは、やはり女性と子供、もしくは小さな子供がいるお父さん。売ってみて分かりました。大人もそうですが、小さなお子さんに手を取ってもらうには、実際にZINEを使って作れるスペースや、小さなワークショップを開催したらもっと広がりを持てるんではないか、ということにも気がつきました。

というのも、友人のお子さんがその場で作りたいと言って下さり、急遽作業スペースを作って、実際に作ってもらったんです。楽しそうに切ってくれて、それだけで泣きそうになりました…。嬉しさとともに、こういうことも今後展開できたら、とかすかな夢を感じました。
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購入し体験してもらった友人家族と筆者(中央)。実際につくってもらうと様々な発見がありました@自由大学祭

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こんな風に展示、販売

切り取るのに夢中

切り取るのに夢中

 

 

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あなたの背中を後押ししたい!
「思いが形に残るのは素晴らしい」

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私が伝えたかったことは、文章や、イラスト、そして写真など、何か自分の中にうずまくものを、世の中に発信してみたい。でも、入り口がわからないし、いきなり出版社に行く勇気もない… なんて、そんなモヤモヤしていた私のような人達にZINEという素敵な形もあります! ということを一番に伝えたいです。

今はインターネットがありますし、Webやブログで発信することが誰でもできる時代です。だけど変な話、電気がなくなったら、消えてしまいます。自分の手の中に、自分の作った作品の重みを感じられるZINEは、素晴らしいツールだと思います。

一度形にすることで、たくさんの気づきがあります。自分では思いもよらなかった意見や、考え方に出会えます。クリエティブな人達に出会えます。何より、とってもとっても作ることがとても楽しいです!
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こんな風にお店にも並べてもらいました

こんな風にお店にも並べてもらいました

Photo:望月 暢彦

マウントジンの桜井さんと話す筆者

MOUNT ZINE 代表の櫻井さんと筆者

photo: Yuki Tanaka

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

残るイベントとしては、2015年 3月6日(金)7日(土)8日(日)に開催される台湾のみです! 異国の人々に、私のZINEは受け止めてもらえるのでしょうか?? ワクワクドキドキ、思いを馳せています。

ちょっと、興味を持ちましたか?
ZINEの世界にようこそ!

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ZINEで自由に表現する方法
1. 世の中のZINEを参考に、つくりたいZINEの構想を練る
2. 思いっきり好きなようにつくる
3. 完成したら、恥ずかしがらずに広めよう、売ってみよう
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最後に、このような機会を与えて下さった深井さんを始め、望月教授、私にZINEの世界を教えてくれた友達、私の本を買ってくれた、手に取ってくれた人達、そして最後に。ZINEスクールでお世話になったMOUNT ZINEの大津さん、櫻井さん。皆さんに大大・大感謝です。ありがとうございました!

写真協力:MOUNT ZINE

 


Nanae(ナナエ)

Nanae(ナナエ)

グラフィックデザイナー。東京都出身。桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科卒。卒業後グラフィック・SPデザイナーとしていくつかのデザイン会社に勤務。一番やりたいことは何なのかと自分に問い続け、2014年より自分のイラストを生かした表現活動をすべく、HPを開設・ZINE作成。様々なことを探求中。趣味は登山・マンガ・美術・音楽鑑賞。見たり聞いたり鑑賞ごとが好き。