TOOLS 15 友達と話すようにプレゼンテーションする方法 / むらかみ みさと

聞き手が自分の言葉を受け取ってくれると信じられると、壇上から眺める景色はとても穏やかに映ります。
TOOLS 15
友達と話すようにプレゼンテーションする方法
むらかみみさと

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自由に生きるために
笑顔で自分を楽にしよう

 

楽しく話せば聞き手も楽しい

弁が立つ子供だったせいか、何かと人前で話す機会が多かったものの、私のプレゼンテーションは一方的で攻撃的なものでした。それは緊張の裏返しで、聴衆に軽んじられないように、否定されないように、強い口調と厳しい表情で牽制していたのです。だから人前で話すことは得意でしたが、楽しい時間ではありませんでした。そのやり方に疑問を持っていませんでしたが、大学生の時、意識を大きく変えさせられる出会いが訪れます。

その笑顔がチャーミングな女性は、ほとんどが初対面である私たち聴衆二十人くらいを前にして、常に穏やかな笑顔で、一度もうつむくこと無く、語りかけるように話をしました。

姿も言葉もキラキラ輝いている。話に引き込まれる。
それは初めてで、衝撃的な経験でした。

気持ちのよい話し方をすると、聞き手も心地よくなるのだと知ったのです。それから、私も笑顔で前を向いて話すようにしよう、と心がけるようになりました。すぐに彼女のように話すことはできませんでしたが、表情や声のトーン、目線を意識し、明るく話すように努めました。すると、聴衆の表情はこんなに豊かなのかと気付いたのです。どんな話に興味を持つのか、集中するか、飽きてしまうかなど感じ取れるようになり、初めて聞き手を意識するようになりました。

もっとうまく伝えるには、楽しませるにはどうすればいいかを考えるようになります。そうすると、“戦い”のように感じていたプレゼンテーションの時間を楽しく感じられるようになりました。聴衆は自分の敵ではなく、私の話を聞こうとしてくれている仲間だと捉えられるようになったのです。友達と話す時のように、自分の言葉をわかりやすく伝えることに集中することができるようになりました。

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笑顔は自分を楽しくする

人前で話す状況というのはどうしても緊張してしまいます。たくさんの視線が自分に集中すると足がすくみます。そんなときは意識して笑顔を作ってみます。

楽しい気分でなくても“笑顔”を作れば、顔の筋肉は“笑顔”の形になります。すると脳が“楽しい時の動きをしているから楽しいんだ”と錯覚して、楽しく感じる、という実験結果があります。

私は小学生の時、無愛想な子供でした。クラスに馴染めず友達は少なく、同級生を見下して「ここは自分のいるべき場所ではない」と思う自意識の固まりで、毎日ぶすっとした顔をしていました。そんな自分を変えたいと思うこともありましたが、これまた自意識が邪魔をしてうまくいきません。

ようやく態度を改めることができたのは、中学校に進学してからでした。受験をして、ほとんど知り合いのいない環境に入ったことで、斜に構えていた自分を反省し、変わることへの気恥ずかしさやプライドをリセットすることができたのです。友達も増えよく笑うようになったからか、毎日はとても楽しいものになりました。

人前で緊張しまうときにも笑顔は有効です。緊張するとどうしても表情が硬くなります。更に緊張は聞いている側にも伝わり、場の空気が硬くなって更に話しにくいという悪循環に陥ります。そんな時は作り笑顔でも、笑ってみてください。気持ちは表情に出ますが、表情から気持ちをコントロールすることもできるのです。自分の感覚を騙して楽しさを演じることで、気持ちが楽になります。それを繰り返して自信が付けば、自然と笑顔で話すことができるようになります。

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プレゼンテーションはコミュニケーションである

聞き手が自分の言葉を受け取ってくれると信じられると、壇上から眺める景色はとても穏やかに映ります。流暢でなくても、優れた表現でなくても“会話”ならば、言葉に心を乗せれば必ず相手に伝わるのです。

プレゼンテーションに臨む姿勢を変えてから、人前で話すことが楽しくなりました。また話す機会を避けなくなると、そのうち“むらかみさんは話ができる人”という評価を得られ、仕事でもプライベートでも人前で話す機会が増えていきました。

プレゼンテーションするチャンスを手にしたら、萎縮せずに、友達と話す気分でチャレンジしてみてください。“自分にはできない”と思っていたことが、やってみると意外に簡単なんだと気づくことができるでしょう。

 

友達と話すようにプレゼンテーションする方法

  1. 聴衆を見回し、できれば全員と目を合わせる
  2. 笑顔でゆっくりと語りかける
  3. 聞き手を信じる

 


むらかみ みさと

むらかみ みさと

1986年阿蘇生まれ。生きた時間の半分を読み書きに費やしてきました。 ORDINARYでは広報・PR、ユーザーコミュニケーションなどを担当。 公私ともにコミュニケーションにまつわる仕事をしています。 円の中心ではなく、接点となる役割を追求したいと思っています。