TOOLS 24 年上の友人の作り方/あぶかわのりこ (なぎなた女子)

90代のガールズトーク、その中身なぎなた女子の場合
TOOLS 24
年上の友人の作り方
あぶかわのりこ(なぎなた女子)

自由に生きるために
敬意と好奇心をもって異文化コミュニケーションを楽しもう

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90代のガールズトーク、その中身 (なぎなた女子の場合)

秋といえば、スポーツの秋。 なぎなたやってみませんか。唐突ですか、ごめんなさい。さてさて、皆さま。『ガールズトーク』と聞いて、何を連想するでしょうか? 甘酸っぱい恋の話、それとも今夢中のアイドルの話、はたまた職場のおもしろ話?

わたくし、なぎなた女子の周りで繰り広げられるガールズトークは、ちょっとひと味、いや、ふた味も違います。老いも若きも心はガール。今現在でもはたまた昔でも、(心は)ガールが集まれば、複数形のエスがつき、ガールズとも言えましょう。

そう! 女も三人集まれば、姦(かしま)しい。姦しいとは、女性はおしゃべりだから、三人も集まれば、騒がしくて仕方がないということ。なぎなたは女性が圧倒的に多い。

そう! 三人より、はるかに多い。ということは、つまり、そう、姦しいどころの騒ぎではなく。女ですもの。ガールズですもの。あんな話やこんな話に花が咲くというもの。ええ、ええ、それはもう。あちらこちらから聞こえてくる、楽しそうなおしゃべりに、こっそり耳を澄ませて聞いてみていれば。やれ孫がどうした、嫁がどうした、お墓はどうした、病気がどうなった、果ては来世、輪廻の果てまで。

ブラボー、 素晴らしい! なんという奥深さ。いやはや、なんと面白く、刺激的なガールズトークでしょう。
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それもそのはず、わたしのまわりのガールズ達は、御年70、はたまた80.さらに上を行くと90まで! 若手もそりゃあもちろんいるのですが、大部分は、そりゃあもう、元気いっぱい人生経験豊富な、ビアガーデンや、牡蠣食べ放題が大大大好きな、元ガールズたちで、和気あいあいと、仲良く騒いでいるのです。

そんな敷居の高そうな、参加するのもおこがましいような、そんな高尚なガールズトークに、えいやっと思い切って飛び込んでみれば、……まあこの、素晴らしく心地よいこと面白いこと。そのガールズ達の年齢が、自分より上であればあるほど、その話題、言葉ひとつとっても、面白く、ためになるものです。

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なぜ年上に惹かれるのか

違いがあるほど人づきあいは面白い

思えば、わたしは、幼少のころ、学生の時から、年上の友人がたくさん居ました。同級生よりも、年上の友人と過ごす方が多いくらいでした。年上といっても、プラス4歳、5歳、…どころではなく、30、40、はたまた60。わたしをなぎなたに誘ったのも、わたしの友人たちの中でも、最高齢の大親友。その大親友とは、週に数回電話する仲で、一緒に回転寿司に行っちゃう仲です。

わたしは年上の友人がきっかけで、人生が変わったことが何度かありました。それは、心がどこか迷った時、人生で、どうしても、決断ができないとき。何かを始めたいのに、始められなかったとき。生きて行くことが、怖くてこわくてしかたなかったとき。

わたしより人生経験が豊富で、わたしより色々ものを知っている、彼女たちの、何気ないことば、そこから伺える、彼女たちの人生、考え方、ひとつ、ひとつが、わたしの心の深いところに、何とも言えない振動を与えてくれるのです。

年上の友人の魅力とは、一体何なのでしょう。わたしはどうして、こんなに年上の友人が大好きなのでしょう。どうしてこんなに、惹かれるのでしょう。それは、いい話を聞ける、だとか、いいことがある、とか、何か得をする、とか、そういうことではなく。

うんうん唸って考えてみて、ただ一つ、本当にひとつ、言えることは、人間と人間、歳の差、生まれ育った時代背景、そういう違いは、あればあるほど、人づきあいが面白い。

お互いがお互いの世代に興味津々。話していて、へえ、だの、ほお!だの、ユリイカ!だの、そういったことが、多々多々あるので、とてもとても面白い。面白いのです。ある意味異文化コミュニケーション?

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長生きっていいもんだ
成し遂げない人生だってすばらしい

わたしが生まれるずっとずーっと前から、友人たちは一生懸命生きてきたわけで、そういう友人たちが、ちいさかったころのこと、歩んできた軌跡、そういうことをたくさん語ってくれる。

まあ、年齢によってはやっぱりお年寄りだから、何度も何度も、同じことを繰り返して教えてくれるけれども、それがまた、毎回、毎回感じとることが異なって、ああ、本当に、長生きするって、素晴らしい。一生懸命生きるって、素晴らしい。そう思えるわけなのです。

彼女たちのお父さんのこと、お母さんのこと、妹のこと、幼くして亡くなった弟のこと、大好きだった親友のこと、わすれられない先生のこと。そういうエピソードから、その当時の日本、社会、個人の在り方、そんな壮大なことまで感じ取ることができる。

「時代が違うと価値観が違う。価値観が違うひととは何を話していいかよく分からない」なあんて、もしかしたら、あなたはそう言うかもしれないけれど、そんなことはない! と思うのです。

価値観が違う、それだけで、相手の話が、何倍も、何百倍も面白いのです。わたしの知らない時代を、生きて、生き抜いて、駆け抜けてきた人が目の前に居て、それを昨日あったことのように、活き活きと楽しそうに、語ってくれる。なんて素敵なことなのでしょう。

 

 

わたしは、何かを成し遂げた人が偉いと、昔は思っていました。でも、わたしの人生で出会った、たくさんの人生の先輩たちは、一人残らず全ての方が魅力的で、全ての方がとても一生懸命で、どんな人でも、どんな生活をしていても、どんな人生でも、もれなく素晴らしく、面白く、私の心を打つのです。どんな人でも生きているひとは、みんな偉い! 今は心から、そう思います。

過去に色んないいこと、悪いこと、どんなことがあったとしても、私の周りの友人たちは、『今』を生きて楽しんでいる。「もう歳だから」なんて言わないで、果敢に色んなことに挑戦している。日々の楽しみを拾う事がとても上手で、そして未来に(来世でも!)夢を持っている。私たちから見ると、まだ想像できない遠い未来、いずれ私たちにも来るだろうその日々を、実際楽しんで過ごしている友人たちは、歳を重ねること、なんて、全然怖くない。むしろ、楽しいことなのだ、と、教えてくれるのです。そして私自身も、彼女たちの年齢になったら、そうありたいと、思うのです。

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気負わなくていい
必要なのは、相手への敬意と好奇心(あと、なぎなた!)

みなさまには、声高に、年上の友人を作ることをおすすめしたい! それも、10、20くらいではない、40、50、もしかしたら60くらい年上の人なんかどうでしょう。

自分がまだ産まれていない時代を、一生懸命生き抜いた、それだけで素晴らしい、尊敬できる、そんな友人はたくさんのことを教えてくれます。うまれたときのこと、小さいときのこと、青春時代のこと、甘ずっぱい恋のこと。それから日本という国の歴史、社会背景が、驚きと感動、そして興味と感謝とともに、深く、心に刻まれるのです。

年上のひと、特に、歳の差が多ければ多いほど、話好きの人が多いのは、ありがたいことに、人間は、きっと下の世代に何かを伝えることが好きなのです。

気負わなくていいんです。同世代の友人と同じで、一緒においしいものを食べて、一緒にとりとめのないことを話し、一緒に笑い合えばいい。

ただ、どんなに親しくしていても、忘れてはいけないのは、相手への敬意です。相手への敬意、そして、好奇心。それが、一番大事だと思います。そうしたら、きっと、あなたの世界が、もっともっと広がることだろうと思います。

さあ、年上の友人、欲しくなってきましたか? 欲しくなってきたら、手っ取り早く、年上の方が集まるところに出かけてみましょう。そう、是非、あなたもなぎなた、はじめましょうよ!(結局勧誘かい!というつっこみをお待ちしています)

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年上の友人の作り方
1.  話しかけられたらチャンス
2.  相手の人生に興味を持ち、敬意を払う
3.  相手の話をよく聞いて、時には質問をしてみる

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Photo: Andrew(上), Juga Paazmaya(中),  don project(下)


あぶかわ のりこ

あぶかわ のりこ

なぎなた女子。秋田県秋田市出身。カトリック系幼稚園に通ったことからキリスト教や仏教に興味を持ち、生きること、死ぬことについて深く考える、小さな哲学者として幼少期を過ごす。中学校入学と同時に剣道部へ入部し、武道や禅などに目覚める。93歳の大親友がなぎなたの範士だったことをきっかけに、新たになぎなたを始め、稽古に精をだしている。いまいちマイナーななぎなたの普及を目指し、「なぎなた女子」としてホームページを作成中。