書いてこなかった
各分野の「普通の人たち」こそ
書きはじめてほしい
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新人作家を育てる過程は、手間がかかります。いまは編集者にそんな余裕がなくなりました。書くことと、編集者とのやりとりに慣れていること。そして仕事として「いつまでにこの内容を何字で」をしっかり守って書いてくれること。これができるのが書くプロだと言われます。編集者としては、新人よりも作家や専業ライターなどのプロとだけ仕事をしていれば手間がかかりません。ほとんど校正もいらずそのまま手を入れずに載せられる原稿が上がってきます。修正のやりとりもほぼしなくていい。だから、どうしても忙しい編集者は、なかなか新人を発掘し育てるという方向にエネルギーをさく余裕がもてないようです。
でも、仕事として書いてる人たちだけが、面白いわけではありません。書く以外の分野で活動している人たちこそ、書きはじめて欲しいと思っています。たとえば、エンジニアとか釣り人とかランナーとか小学生とか、普通の人でもユニークな視点や経験を持っている人たちがいます。専業作家以外のそういう職業人たちこそ、ぼくらの知らないそれぞれの現場でのリアルな世界を教えてくれるものです。
はじめて編集者とやりとりして原稿を書く人は、書くスキルが上がります。ひとりで自由に書いていると、なかなか読者目線でフィードバックをもらえる経験が積めません。読者から「いいね」というコメントはつきますが、「もっとこう見せた方があなたの魅力がより伝わるのでは?」というフィードバックまではわざわざしてくれないものです。をしてもらって、良くなるし自分のスタイルが見つかっていきます。
(約646字)
Photo: Denis-Carl Robidoux