【第186話】中二病が輪郭をつくる / 深井次郎エッセイ

あえてみんなと違うカメラを使ってみる

「やっぱ二眼レフでしょ。このファインダーがいいのよ」「でた。中二病」

あえて普通を避けてみると
自分の輪郭がはっきりしてくる

 

ぼくも高校時代から好きなことが見つからなくて焦ってきました。なにかしら一芸に秀でた大人になりたいと思っていて、それでもその一芸が何なのか見つからないのです。高校生の時点で、人よりも自分が優れているものも見つかりません。しかし、とにかく人と同じことをするのを止めてみようと決めて、そこから自分の輪郭線が少しずつですが浮き出てきたようです。

毎日学校に行くのをやめてみる。受験競争を降りてみる。大学ではサークルに入らない。普通のバイトはしない。公務員、サラリーマンを目指さない。人が読まないような本を読む。変な髪型にしてみる。などなど。

もちろん、やせ我慢してるんです。ぼくはもともとPOP志向の男でして、変わり者ではないのです。超普通な、根が真面目な人間。そんな男がわざわざ少数派を選ぶなんて、逆に不自然です。でも、若いうちはそれが必要なのです。だって、少数派には、明確な意志が必要です。なぜ、キミはそっちを選んだの? そういう問いを突きつけられる。毎回毎回です。これはものすごくめんどうなことです。それらしい理由を考えてまわりの大人を説得しなければならないのですから。でも、その過程で自分の好みや考えがはっきりする。わざわざ学校に行かない時期をつくったからこそ、「あ、やっぱり学校に行きたい」と思うのです。

なんとなく人と同じものを選ぶ。これをくり返していると、自分が本当に好きで選んでいるのか、まわりの期待に流されているのか、それがわからなくなってしまいます。少数派を気取る若者は、「中二病」と揶揄されます。クラスのみんなが流行のJ-POPを聴いてる中で、ひとり洋楽を聴いて大人ぶっている中二男子のようだとバカにされる。それでも、あえて少数派を選んでみる経験は、やっぱり必要な通り道なのです。

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(約730字)
Photo: HaoJan Chang


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。