TOOLS 66 魅了する発声のヒント/金子 陽子( 声楽レッスン講師 / みちるとひらく主宰 ) 

不思議なもので発声する時にあまり考えずに思い切ったほうが良い声になります。良い声が欲しい、さっきうまくできたから今度も同じようにしよう、自分の声を聴いて判断しよう、などとあれこれ思いながら始めると、ほぼうまくいきません。身体が硬くなるからです。
TOOLS 66
魅了する発声のヒント
金子 陽子  ( 声楽レッスン講師 / みちるとひらく主宰 )

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自由に生きるために
子供のように反応し、成長しよう

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まもなく我が家の子供が2歳になります。この2年間で、子供をいろいろな親子コンサートや路上ライブ、そして私が歌ったり教えたりする場所に連れて行きました

もともと音楽好きな子でしたが、さらに舞台を好きになって、ちょっとした内輪のミニコンサートでは私と一緒に舞台に立って歌ったりしています。そして、私は内弁慶で外ではなかなか出来ないのですが、家の中ではよく音楽と共に踊っているので、そんな母親を見て子供も歌いながら好きに踊っています。

そんな生活の中、この年末、子供が親戚の弾くギターに合わせて、独創的なオリジナルダンス、それも音に合わせて緩急や表情のあるダンスを踊りました。すごいすごい! とその時は感激し、ビデオ撮っとけば良かった! と心底後悔したのですが。親バカなんですかね。

音に合わせて踊る娘

音に合わせて踊る娘

 

自分を制限しているのは自分

しばらく経って、気づいたことがありました。

音が鳴ったら自然に体が動く。

それって、大人になるにつれて出来なくなってるんじゃないかな、ということに。我が家の子供が踊っているその時、彼女は本当に没頭して踊り、楽しんでその世界に入っています。

大人になると、もうひとりの自分が「社会の目」になり、こんなところで踊ったら恥ずかしい、街中でこんな角度の腕の出し方は恥ずかしい、この背筋の伸ばし方は恥ずかしい、など、自分を制限してしまいます。でも、子供にはそれが無いのだと思います。

 

成長が早い人は、アウトプットが早い

また、彼女は鳥を見て、道端で身体全体で鳥の真似を始めることがあります。それは何か心動かされたから、または単に鳥になりたいから、身体が動くのではないでしょうか? そしてそれを表現した後は、スッキリして次の活動へ移れるようです。

大人の場合は、鳥が面白いと感じたとしても、

鳥の真似をしたい → でも、恥ずかしいからやめとこ → でもやってみたい → さっきやれば良かった → ウズウズするなぁ…

と、身体にまとわりつく、アウトプットしなかったゆえの残りものがあります。

子供には、それが無い。だからこそ、思慮に欠ける短絡的なこともしてしまう、とも言えますが、逆に言えば、やりきった、という充実感があり、次々といろいろなことに没頭していけます。だからこそ成長が早いのです。

逆に言えば、子供には彼らの成長のためにそのような早いスピードでの展開が必然なのであって、われわれ大人には道端で鳥になることが必要なわけではないと思います。でも、ここから学ぶものはあるのではないでしょうか?

 

すぐ取りかかり、できるまで没頭する

身体を動かすことに限らず、閃いたアイディアを実行してみる、伝えたい人に伝えたいことを伝える。そんなことに、子供のやり方が使えるのではないか? と思いました。

よく、成功への近道はとても小さなことを実行していくことの積み重ね、と言われます。それは、これまで述べてきた子供の行動から学ぶことができます。

例えば調べものひとつするにも、躊躇せず、すぐに取りかかり、できるまで没頭する。それをすべてにおいて実行していけば、いつか大きなことが達成できるのは、想像にかたくないでしょう。

 

身をまかせると、思いがけない良い声が出る

それは、声楽のレッスンの中でも同じことが言えると思っています。

声というものは不思議なもので、発声する時にあまり考えずに思い切ったほうが、良い声になります。反対に、良い声が欲しい、さっきうまくできたから今度も同じようにしよう、自分の声を聴いて判断しよう、などとあれこれ思いながら始めると、ほぼうまくいきません。身体が硬くなり、本来使うべき場所が使えないからです。

そのためには、人にもよりますが「怖い、出来るかな、恥ずかしい」という思いは断ち、「インスピレーションに従う、身体の感覚に敏感になる、身をまかせる」ということが重要です。そうしてレッスン中の先生からの指摘に素早く応えていくことで、思いがけない声を発見するのです。

さらに、自分がある程度できたと思っても人に聴いてもらうと物足りない場合が多く、これでもか!と身体を使ってみると、初めて「いいね」という状態であることが多いのです。それにはかなりのエネルギーと集中力が必要で、没頭しなければなし得ません。

歌を教えたり歌ったりしながら、人生に通じるなぁと思うことしばしばなのです。

実は今、これを書いているのは飛行機の中です。子供を夫に預けての1人日帰り旅。どこに行こうか、何をしようか、9年ぶりの1人旅に備えて散々調べたものの、結局目的地に到着した時に感じる気持ちに素直に従うことにしました。自分を制限せず思うままに、感じたら行動し、適当に済まさず満足するまで。この連続で、成長する1年にしたいものです。

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自分らしい良い声を出す方法
1.  自分を制限しない
2.  アウトプットを早くする
3.  没頭する

 

PHOTO :Chris Wolff (トップ画像)、他は本人


金子陽子

金子陽子

かねこようこ。声楽レッスン講師。フェリス女学院大学音楽学部声楽学科卒業。中学生頃からコンプレックスが強く、大学時代は精神的に不安定で過食&こもりがちに。しかし、歌うことでそれらが解放されて自己肯定につながった経験から、発声と歌には心を解放して前を向かせる力があると確信する。「人は心身が満ちると解放される」との想いから「みちるとひらく」と名付けた活動を開始。心身を解放させる歌のレッスン、音楽講師、コンサートや音楽ツアー企画。