約2年前に日本に帰って来て以来、海外赴任に代わる次の夢として何を設定すれば良いのか、つかめずにいます。
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人生の冬の過ごし方
坂本那香子 (「母になる。海外で働く」「シンガポール子連れ赴任」)
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自由に生きるために
「夢を叶えた後の辛さ」を賢く乗りこえよう
夢を叶えた後も人生は続く
いま、冬の季節を過ごすあなたへ
いきなりぶっちゃけますと、私、ここ2年ぐらい冬の季節を過ごしています。自分の進むべき道がどっちなのか全然分からずフラフラしては、あちこちに頭をゴツンとぶつけるような状態が続いています。自分自身が何も生み出せていないだけではなく、いろんな方に不義理をしたり、ご迷惑を掛けたりしていて、心が痛みます。暗い中、手探りで道を探しています。はっきり言って、辛いです。
これまでにも辛いことはありました。日本の普通高校からいきなりアメリカの大学に入学した時も、新卒でコンサルティング会社に入社した時も辛かったです。でも、それは両方とも外的要因でした。だから、対処方法は単純だったのです。とにかく頑張るしかない。前へ進め。今思えば、あれは体育会的な分かりやすさのある辛さでした。
それに比べると、今回は完全に内的要因です。外面からは何が辛いのかさっぱり分からないだろうと思います。実際、悩み相談をした何人かの友人には、贅沢な悩みだねと一蹴されました。
今、私は、この先、何を目標にすれば良いのか分からずにいます。長い間、私は海外赴任を目標にしていました。2010年から3年間シンガポールに赴任して、その夢は叶えました。そして、約2年前に日本に帰って来て以来、海外赴任に代わる次の夢として何を設定すれば良いのか、つかめずにいます。
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目標達成型人間にとって
次の夢が見つからないのは辛い
私は目標に向かって走るのが大好きです。そんな人間が目標を見失った時、どんなに悶々とするのか、身をもって学びました。それは、発散することのできないパワーが自分の内部を蝕むような辛さです。
人生初の気持ちの悪い辛さにめげそうになる一方で、心の中にはちゃんと冷静な自分もいます。彼女は、私に向かってこう語りかけてきます。人生いつでも絶好調なはずがないでしょう。人生の中で季節は巡るものだから、秋が来て、冬が来てっていうのは当然のことだよ。春夏秋冬それぞれの季節の過ごし方を知っている人でありたいよね。
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という事で、人生の中で誰しもに巡ってくる冬の季節の、賢い過ごし方を考察します。この文章には、冬を賢く過ごせる人になりたいという私の個人的な願いがこもっています。
その1.あせらない
実際の四季と同じように、人生の季節も、人の手の届かないところで勝手に巡っているような気がします。それは、大部分が神様のおぼしめしです。いつ冬の時代が終わるのかは、私のコントロール外です。なので、大事なのは、焦らないことです。ただひたすら身を縮めて、時に逆らわずに待ちます。あまり先のことを考えず、今のことを考えます。いつか、香りに魅かれてふと見上げると頭上に梅が咲いている、という日がきっと来ます。冬が巡ってくるのと同じように、春も必ず巡ってくるのです。
その2.たくわえる
いくら「あせらない」と自分に言い聞かせても、人は、なかなか何もせずには時間を過ごせない生き物です。なので、冬にしかやらないような事をやってみるのもいいかも知れません。最近、私はよく哲学の本や詩集を読んでいます。元気いっぱいの時にはまったく響かなかった本が、不思議に響くのです。それに、難し過ぎて何が書いてあるのか分からない文章を必死で読むのは、頭が暇にならないという効能があります。賢人ならざる身、暇だとろくなことを考えません。過去の賢人たちが書いた文章を読んで、新しい考え方や感じ方を自分の中に蓄えるほうが、きっと有意義です。
その3.たのしむ
そんな余裕があったら冬の時代って言わないでしょうと怒られそうですが、そんな余裕がないからこそ、楽しむのは大事です。寒い中、ずっと一人で縮こまっていると、それこそ鬱々としてしまいます。冬が長い地域ほど、冬の楽しみ方を知っているものです。外が寒いからこそ、日本だと鍋パーティーとか、北欧だとサウナとか、温かい空間での人との交流が心に残ります。楽しい時間は、やっぱりパワーの源です。自分を苦しめているものをとにかく全部一時棚上げして、少しでも自分が楽しめることを探します。
その4.ふかぼる
ここまでの3つは全て、時をやり過ごしてとにかく季節が巡るのを待とうというメッセージでした。ところが、最後の「ふかぼる」は正反対です。問題にちゃんと向き合って考えようという内容です。でも、それにもちょっとしたコツがあります。まず、「ふかぼる」は、元気がない時にやっちゃダメです。あと、夜の室内も避けた方がいいです。どこか明るい場所を歩きながら、というのが私のお気に入りです。天気の良い日に、多摩川沿いや新宿御苑を歩いて季節の移ろいを感じながら、何かを考えているような、いないような、ぼんやりした状態の時、人はより本質に近づくようです。
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いつか、この辛さが過去になった時
人に説明のしづらい、そして必然的に自分にもよく分からないこの気持ち悪い辛さも、いつかは必ず過去のものになります。放り出すにしろ、乗り越えるにしろ、人生で一つの季節が永遠に続くことはありません。
この辛さが過去になった時、私はそれについてどんなふうに語るでしょう。 辛さを糧にした人に特有の、まるで静かな林の中にあって、その林よりも更にしんとした湖のような、そんな落ち着きをもって語りたいものだと夢みています。それまでの間は、ここが正念場だと腹をくくって、あちこちでフラフラ、ゴツンとしながらも、冬の季節を過ごします。
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人生の冬の季節の過ごし方
1. あせらない
2. たくわえる
3. たのしむ
4. ふかぼる
いかがでしたか? 坂本那香子さんが登場する読みものも一緒にどうぞ 連載『一身上の都合』 第4話「夢を叶えた後の人生を歩き続けるため」坂本那香子さんの場合(2014.7.14) |
Photo:Andreas Knudsen, Laura Thorne