【ハナサクトキ】 Mother’s day

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母の日の花屋は、クリスマスのケーキ屋さんに似ている
【連載】菊池裕子の「ハナサクトキ」 Vol.8
Mother’s day
 母の日の花屋は、クリスマスのケーキ屋さんに似ている 

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桜もすっかり葉桜となり、新緑がきらきら輝き始める5月。花屋にとって年に一度の一大イベント、母の日がやって来ます。

母の日の花屋は、クリスマスのケーキ屋さんに似ているなぁと思います。そのイベントを過ぎてしまうと価値が変わってしまうこと。扱うものが生ものなので作り置きが出来ないこと。なかなかに共通点があるのです。時間との戦いですよね…なんて目を細めつつ、(勝手に) 同士を感じてしまうのです。

最初に修行をした花屋さんは一定の人気があり、毎年母の日ともなると数百件の注文を受けていました。個人経営の花屋さんだったので、制作スタッフはオーナーを含め3名のみ。母の日までの数日間は、その限られた人数で、制作しては送り出し、また制作しては旅立ちを見送る…という毎日がずっと続きました。


今振り返ると、週末にはご結婚式装花の制作や搬入も重なっていたので、ほんとうに鍛えられたなぁと思います。母の日のお花ほとんど全てが配送なので、伝票書き (わたしは筆圧が無駄に強いらしく必要以上に疲れるのです…) やダンボールの組み立て (これが一番辛かったなぁ!) 、制作からラッピング、梱包まで…腰も腕も疲労困憊になった事を思い出します。

花屋の仕事は一見華やかで優雅に思われる事もありますが、実は体育会系で、体力も精神力もあって体調管理が出来ないと続けられないタフな仕事です。でもそれを超えるための原動力は、お花が好きなことはもちろん、そのお花で喜んでもらえた時の充足感なんだと思います。達成感と共に、また頑張れる、と思うのです。

マルメの今年の母の日は、ご結婚式装花の搬入と重なりました。フリーランスで始めたばかりの頃はほとんどオーダーもなく過ぎていた母の日も、おかげさまで忙しく過ごせるようになって来ました。今年もきっと、ご近所のケーキ屋さんをちらりと見つつ (勝手に) 同士を感じながら、奮闘する数日間になりそうです。

 

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菊池裕子

菊池裕子

Malmö (マルメ)主宰 /「いつも」の花と「特別」な花をあつかう花屋。「いつも」の花は、日々の暮らしがちょっぴり楽しくなるような。「特別」な花は、とびきりの日がもっと輝くような。それぞれにこだわった花を、ナチュラルなテイストで提案している。駒沢にあるCOPAINDA gallery(コパンダギャラリー)内の小さな花屋。