ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第15話】生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編>

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。

少数民族の手仕事らしいか?と言えば決してそうではないかもしれません。しかし購入していくお客様のほとんどは、なぜか引き寄せられるように「これ……なんですか?」と手に取り、じっくりその表情を眺めます。sasamoto_s

 

第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編>

 

明けましておめでとうございます。ノマディックラフト ヨメです。

昨年からはじめた当連載も、とうとう15回目。今回は私たちの扱うアイテムがどのように作られているのか、生産者さんたちを訪ねたときの様子をお届けしようと思います。

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静かなるロングセラー
タイから届く素焼きの鳥たち

 

今回、ご紹介するアイテムは以前、第6話で少しだけ紹介したことがありますが、ノマディックラフトがオープンしてから長く長く売れ続けている、静かなロングセラー商品。鳥をモチーフにしたネックレス&オブジェです。文字だけだと想像がつきづらいと思いますので写真をどうぞ。まずはネックレスから。

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小さすぎて分からないかもしれませんので、アップもご用意しました。どうぞ!

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これはタイの山岳地帯に住む少数民族のお母さんたちが作るフェアトレード製品。ペンダントのトップ部分は、実際に山岳地帯に住んでいる鳥をモチーフにした鳥笛。一つひとつ粘土をこねて、素焼きし、手作業で着彩しています。で、ちなみにこのネックレスバージョンのほか、オブジェタイプの鳥笛もあります。それがこちら。

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なんとも素朴な表情で、今にも言葉を話しそうです。こちらはやはりお母さんたちの手による、専用ケース付き。

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まるで巣に籠もっているようですね。こちらもオブジェとして販売していますが、ちゃんと笛として音が鳴るように作られています。

こちらを手がけているのが、タイのチェンライで少数民族のサポート活動をしている「The mirror foundation」。ノマディックラフトが最も古くからお付き合いをしていただいている団体です。この鳥笛ネックレス&オブジェは当初から団体のオリジナル製品として作られていた物です。日本に紹介するアイテムを選定するにあたり、最初は「いくら笛になっているとはいえ、鳥モチーフのネックレスとかオブジェって需要あるのかしら…… 」と今ひとつお客様の反応がどうなるか判断がつきませんでした。

しかし、そのなんとも素朴な優しい表情が心に残り「トライアルで輸入してみて、お客様の反応を見てみよう! 」と販売してみたところ、もう6年以上ずっとコンスタントに動いているロングセラーになっています。

少数民族の手仕事らしいか? と言えば決してそうではないかもしれません。しかし購入していくお客様のほとんどは、なぜか引き寄せられるように「これ…… なんですか? 」と手に取り、じっくりその表情を眺めます。手描きならではの一つひとつ違う表情を愛おしそうに見つめて「このコにします! 」と選んでくれた方々は、アウトドア好きな人、鳥を飼っている鳥好きの人、ジーンズマニアの人、ミュージシャンの人、青い鳥モチーフを集めている人、なかにはフクロウコレクターという人など本当にさまざまで、接客しているこちらも出会いにワクワクするほどです。

 

チェンライに住む
生産者さんのもとへ

さて、そんな鳥たちを作ってくれている生産者さんはタイのチェンライに住んでいます。「The mirror foundation」の敷地内に作業場があり、制作を担当しているのは近くに住んでいるアカ族の女性たちです。

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みなさんとても気さくで、明るい方たちばかり。女性同士、お話に花を咲かせながら作業を行っています。

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まずは、ネックレスのトップ部分を作るため、粘土をこねて成形しています。ちいさなヘラと竹串を使ってすべて手作業で鳥の原形を作るのです。写真上はカワセミのようなちいさな鳥、下はオウムやインコのような尻尾の長い鳥になる予定。

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店主が笛の成形を教わったのはこのお母さん。「やってみる? 」と言われておずおず挑戦しましたが、素速く鳥の形にまとめ、さらに音が鳴るように穴を空けるのはイメージ以上の難しさ。なおかつ店主はおっとり気質なので、丁寧なのですが作業はゆっくり。従って見かねたお母さんに「貸してごらん! 」と途中で取り上げられ、完成させられちゃいました(笑)! ドンマイ!

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色つけは下描きなしのフリーハンド。慣れた手つきですいすいと着彩していきます。

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完成したオブジェたち。日本に入ってくるのは一部ですが、現地には本当にさまざまなタイプの「鳥」があって思わず目移り。それだけ、タイの山岳地帯には色とりどり美しい鳥たちが住んでいることの証でもあります。

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こちらは大きいオブジェタイプの鳥笛を作っているところ。……なのですが、撮影時はクリスマス前だったせいか、なんと大量にサンタクロースの笛が作られていました!! そうなのです、このあたりお母さんたちはとっても自由で「鳥」がモチーフの商品を作っているはずが、新作としていろんな笛が生まれてくるのです……。

 

鳥とともに飛び立て!
お母さんたちの思い

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こちらは完成した鳥笛ネックレスのトップや、色づけ前の素焼きが入った籠。タイの山岳部には絶対いないであろう「ペンギン」がいるのは百歩譲って「鳥」だからいいか、と思うのですが、よく観ると「ファインディング・ニモ」的な魚の姿も(笑)。

鳥笛ネックレスが予想以上に好評で追加注文をしたある日、荷物のなかに「テントウムシ」と「パンダ」モチーフのネックレスが入っていたときは、思わず笑ってしまいました。店主と「困ったね…… でもかわいいから店頭に出して、説明してみようか」と並べてみたところ、テントウムシは私の友人が気に入り、パンダは小学生のお子様のためにお母さんが買ってゆきました。

「鳥と商品名をつけているなら、鳥で作らなきゃダメ! 」と言うのは簡単なことです。でも彼女たちの発想を大切にしている団体の姿勢があり、もの作りを楽しんでいるお母さんたちののびのびした雰囲気がこの場にはあり、たまに入荷してくる「おっと、鳥じゃない! 」というアイテムから、そういう現地の雰囲気も伝わればいいなあ、と思っています。

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次回は、刺しゅうや染め、織などの生産者さんを訪ねた時のお話をお届けしますね。どうぞお楽しみに!

 

 ノマディックラフトのイベント出店情報 

安穏朝市
@東京中央区・築地本願寺前広場
1月17日(日)  9~15時
詳細は http://annon-asaichi.blogspot.jp
毎月1度、本願寺さんの広場で開かれる暮らしの温もりや匂いを感じる素朴な朝市です。採れたての産直野菜から暮らしの雑貨までが揃います。私たちも看板犬レラと一緒に、ゆるゆると出店中。築地の場外市場からも歩いてすぐ。気持ちいい休日の朝、ぜひ足をお運びください。

(次回もお楽しみに。隔週土曜更新です)
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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)

 


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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/