ひとつの星座 – 3児のママが小説を出すまで【第8話】 小説を学ぶ中で、自分の不足と向き合う日々 2016年 / 諸星久美

morohoshi作家の先生方が共通して言われていた「とにかく書く。書き続ける」という泥臭いチャレンジならできると思ったからだ。なんて諦めが悪いのだろうと思いながらも、打たれても消えない熱こそが答えのような気もした。簡単に手にできないものへの執着なのか、純粋な情熱なのかが分からなくなるたびに、パソコンに向かった。頭で考えるよりも先に、動いてしまう体の方を信じたのだ
連載 「 ひとつの星座 」 とは  【毎月25日公開】
母になっても夢を追うことはできるのでしょうか。諸星久美さんが約15年前、27歳で母になると同時期に芽生えた夢。それは「物語を書いて多くの人に読んでほしい」という夢でした。とはいえ、3児の子育てあり、仕事あり、書く経験なしの現実。彼女は、家事や育児、仕事の合間をぬって、どのように書いてきたのでしょう。書くことを通じて出会ってきた方たちや、家族との暮らし、思うようにいかない時期の過ごし方など、記憶をなぞるように、ゆっくりとたどっていきます。42歳の現在、ようやく新人小説家としてスタートラインに立ったママが、本を出版するまでの話。

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第8話   小説を学ぶ中で、自分の不足と向き合う日々 2016年 

TEXT : 諸星 久美

   
連載に入る前にお知らせです 

 

オズマガジン統括編集長の古川誠さんの小説『りんどう珈琲』を読んで、また小説が書きたいと強く思ったところまでが前回のお話でしたが、せっかくなので、古川誠さんの2作目の小説についてのお知らせです。

私がノベライズ担当させてもらった『千住クレイジーボーイズ』は、センジュ出版の4冊目の本。そしてなんと、センジュ出版5冊目の出版予定本が、古川誠さんの新しい小説『ハイツひなげし』なのです。

出版日などはまだ未定ですが、私に大きなチャンスを下さり、鍛えて下さった、センジュ出版の吉滿明子代表と古川誠さん(お二人は以前、同じ職場の同僚でした)がタッグを組んで、良き小説が生まれないわけがない! と、私は『ハイツひなげし』を手に取る瞬間を心待ちにしているのです!

いずれ、この連載の中で発売日の発表ができれば幸いです!
と、鼻息荒く宣伝したところで連載へ……。

 

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「本気」で目指してみたい

 

小説の構想は頭にあり、書ききれると思っていたけれど、自分の中に欠けているものがあると漠然と感じていた私は、天狼院書店が新しく生み出した講義、「本気で小説家を目指す 小説家養成ゼミ」を受講することを決めた。

ベタなネーミングだなと思いつつも、フックになったのは「本気」というワード。小説を書きたいという思いを、師について学びながら「本気」で追いかけてみたかったのだ。

フルタイムの仕事を辞めた上に、長男の授業料+次男の塾代がかかるというのに、まだ夢を求めて勉強がしたいと申し出た私に、

「はい頑張って」と夫。

え? いいの? と自分で問うたくせに少しひるみながら、「こりゃ、下手なことはできないな…… 」と、私はまたしても、受講はじめの小説プロット提出に3作品のプロットを提出した。

詳しい講義の内容はここには記せないが、その3作品のプロットの内の1作を必ず書き上げると誓って、私は2週に1度の講義を受けに池袋の天狼院書店へ通った。

元、出版社の編集者であった先生の講評を受け、納得し、自分の不足を知り、落胆した。回を重ねるごとに、課題を提出する受講者は減っていった。何度もふるいにかけられるのだ。書きたい人も、書ける人も、才ある人もいるようだけど、それでもまだ書くのか? とふるいにかけられ、講義の名の通り、「本気で小説家を目指す」人だけが残っていくようだった。

 

 不足を知る 

 

講義を受けたことで、私には突出した才はないのだということは分かった。なぜなら、私よりも数段先へ進み、好評価を受けている受講者を目の当たりにしたからだ。

けれど、そんな受講者への嫉妬を抱きながらも、私はそのふるいから、自ら降りることはしなかった。講義に特別講師として登壇してくださった、作家の先生方が共通して言われていた「とにかく書く。書き続ける」という泥臭いチャレンジならできると思ったからだ。

なんて諦めが悪いのだろうと思いながらも、打たれても消えない熱こそが答えのような気もした。簡単に手にできないものへの執着なのか、純粋な情熱なのかが分からなくなるたびに、パソコンに向かった。頭で考えるよりも先に、動いてしまう体の方を信じたのだ。

 

 

 自分をさらけ出すための講義

「本気で小説家を目指す 小説家養成ゼミ」の受講が終わりに近づくにつれ、私はもう一つの講義、天狼院書店で人気の「人生を変えるライティング教室 天狼院ライティング・ゼミ」を受講することにした。

「本気で~」に続き、なんとベタなネーミングなんだと思ったが、こちらは、天狼院書店、店主の三浦崇典氏が1週に1作提出した記事を読み、講評してくれるという、講評に飢えていた私にとっては嬉しすぎる講義だったため、受けない手はなかったのである。

1週に1作、必ず提出する。

そう決めて受講しながら、「小説家養成ゼミ」で並行して小説を書く合間に、僅かな仕事と家庭教育アドバイザーの仕事と、家事と育児と夫婦の時間。

忙しくも、疲れがパソコンに向かうことで消えていくことを知り、締め切りがあることで、ひねり出すものがあることを知り、ひねり出すために自分の中を掘り進め、自分の内にあるものがさらけ出されてくるような開放感を味わった時期でもあったように思う。

自分の内なるものの開放は、書く、という表現の面白さを、これまでとは違った視点で私に教えてくれたような気がする。それはどこか、快楽の混ざる遊びのようなものであり、もうこの面白さを手放すことはできないだろうという、確信を得た体験でもあった。

12月末~5月までの小説家養成ゼミの期間内で書いた小説1作。
4月~7月までのライティング・ゼミで、週1で提出した記事17作。

これらの小説や記事が、講義の名の通り人生を変えたかどうかは、次の連載以降で書いていこうと思う。

 

 

  

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<本の紹介> 「千住クレイジーボーイズ」諸星久美
『千住クレイジーボーイズ』は、かつて一世を風靡したことのある芸人、辰村恵吾(塚本高史さんが演じられています)が、千住のまちの人たちとの関わりの中で成長していく物語。ノベライズ本を書くうちに、恵吾との共通点に気づいた私は、作中に、ものを書く世界でどのように生きていきたいか、という私の想いも重ねて語っていますので、それも含めて、本を楽しんでくれたらうれしいです。

本のご購入方法は、版元であるセンジュ出版のウェブサイトにて。              

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<ドラマの紹介>

ドラマ「千住クレイジーボーイズ」【放送されました】ドラマ『千住クレイジーボーイズ』2017年8月25日(金)19:30~ NHK総合テレビ  ウェブサイトはこちら   .  

(次回もお楽しみに。毎月1回、25日に更新予定です) =ーー

ご意見ご感想をお待ちしています 編集部まで


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連載バックナンバー

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第2話 理想の母親にはなれず、もがく中で書くことに出逢う 2002年(2017.9.25)
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第4話 書くことを再熱させてくれたもの 2009 – 2011年(2017.11.25)
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第6話 12歳の長男が、夢の叶え方を教えてくれた。2014 – 2015年(2018.1.25)
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TOOLS 40  孤立に耐える、という経験が育むもの
TOOLS 36  肯定のループが育む賑やか5人家族
 

 

 


諸星久美

諸星久美

(もろほし くみ)1975年8月11日 東京生まれ。東京家政大学短期大学部保育科卒業後、幼稚園勤務を経て結婚。自費出版著書『Snowdome』を執筆し、IID世田谷ものづくり学校内「スノードーム美術館」に置いてもらうなど自ら営業活動も行う。またインディーズ文芸創作誌『Witchenkare』に寄稿したり、東京国際文芸フェスティバルで選書イベントを企画するなど「書くことが出会いを生み、人生を豊かにしてくれている!」という想いを抱いて日々を生きる、3児の母。2017年8月25日、センジュ出版より『千住クレイジーボーイズ』ノベライズ本出版。オーディナリー編集部所属。