舛廣純子が聞く「しなキャリ図鑑」 【第27話】 サプライチェーン業務プロセスオーナーのチカラ / 新倉菜摘さんの場合

masuhirojunko_long_bannerもともとパン屋の娘。実体のない金融商品を扱うことにギャップを感じていた私は「オペレーションマネジメント」のコースを選びました。その時はまさかその選択が自分の人生を左右していくとも考えていなかったのですから、人生は面白いもの
連載「しなキャリ図鑑」とは  【毎月1回更新 / 第4月曜】
「しなやかに生きる人のためのキャリア図鑑」の略称。キャリアカウンセラー舛廣純子が、イキイキと働く仕事人にインタビューし、その仕事に大切なチカラを中心にキャリア・仕事そのものも掘り下げます。10年後の未来に自分がどんな風に仕事をしているのかも見えづらくなった今の時代。インタビューを読むことで、自分の持っている力にも気づいたり、したことのない仕事に興味を持ったり、これから伸ばしたい自分の力を見つけられたなら、あなたの仕事人生も変化に対してさらに強くてしなやかなものになっていくかもしれません。

 

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第27話   サプライチェーン業務プロセスオーナーのチカラ 
診断力と説得力・翻訳力で自社製品が全世界当たり前に店頭に並ぶことに貢献する

TEXT : 舛廣 純子

新倉菜摘

教えてくれた人 
新倉 菜摘(にいくら なつみ) 英系製薬会社  サプライチェーン業務プロセスオーナー 

日本女子大学文学部国文科日本語学専攻卒業後、国内大手損害保険会社に就職。退社後、国際交流基金主催の派遣プログラムにより米国ウィスコンシン州で日本語教師を経験。その後、ミネソタ州セントトマス大学でMBAを取得。帰国後は日本IBMに転職。サプライチェーンアナリスト、在庫管理マネージャー、ソリューション営業を経験後退社し、英系製薬会社に転職。日本でコンシューマヘルスケア部門のサプライチェーンリーダーを務めた後、2009年に英国本社に異動、転籍。現職に至る。

※サプライチェーンとは:
完成品が消費者の手に届くまでの供給工程のつながり。そのつながりを効率的にマネージメントすることで余剰在庫の削減など適正な生産体制を目指す。

※サプライチェーン業務プロセスオーナーとは:
企業資源管理(Enterprise Resource Planning、略してERP)システムのうち、サプライチェーン分野の責任者として多国籍企業のなかで世界共通の業務プロセスを決定し、システムに反映させる仕事。

※ERP(企業資源管理)システムとは:
受注管理、経理、製造ライン管理等これまで部門ごとにバラバラだったシステムを統合することにより、企業レベルで経営を可視化、効率化できるシステム。これにより「受注して品物が発送されたとたん、リアルタイムで売り上げが計上され、倉庫の在庫が消費され、工場に製造指示が伝わる」ようになり意思決定が迅速になる。SAPやOracleなどの製品が有名。

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<サプライチェーン業務プロセスオーナーの仕事に大切な能力はなんですか?>  
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1. 診断力      課題発見力 分析力 関係構築能力

私は現職の英系製薬会社本社が導入しているSAP社製の企業資源管理(ERP)システムを弊社の世界各国の営業拠点、物流拠点、製造拠点に展開するプロジェクトにおり、サプライチェーン業務プロセスをデザインし 、管理しています。私の会社は世界90カ国以上で営業をしている多国籍企業ですが、これまでは国ごとにバラバラのシステムを使い、決算時に各国が業務報告を英国本社に送るという体制でした。統一されたシステムにすることで、本社が日本やブラジルといった営業拠点の動静を迅速に掌握できるようになるわけです。

とはいえ本社が導入しようとしているシステムを使うことで世界各国の業務が滞ってしまったり、その国の法律に反してしまっては本末転倒ですよね。それを防ぐには各国の全く異なる法律や商習慣を理解しなくてはなりません。

たとえば南米は、税法が非常に複雑ですし、アジア諸国は明文化されていない商習慣がたくさんあります。そういった背景を理解した上で、各国がこれまで使用していたシステムとERPシステムの仕様を比較し、双方のギャップを埋める必要があります。その国の仕事のやり方を変えるのか、それともERPシステムを変えるのか判断するチカラが必要です。

そのためには、各国の法律や商習慣を勉強することに加え、各国の担当者と信頼関係を作り、「それは法令遵守のために必須なのか、それとも商習慣で顧客から求められているのか、ただいつもそうしてきたからなのか」を正しくヒアリングすることが前提になります。あとから「実は」みたいなことが出てこないためには、相手の懐に飛び込み、信頼を獲得した上で、本音を引き出し、冷静に診断をすることが重要です。

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2. 説得力     説得力 プレゼンテーション力 ネットワーク力

 

診断力を使って判断した結果を各国のメンバーに伝え納得させたり、もしくは本社にシステム変更の投資の必要性を説得するには、論理的な説明に加え、相手が理解してくれるための「伝わるプレゼンテーション」が必要になります。私は英語を日々使っていますが、決してパーフェクトではありません。だからこそ、ネイティブにも、英語が母語でない人たちにも誤解なく意思伝達するため、「このプレゼンテーションはきちんと伝わっているのか」を意識しています。比喩を多く使う、図解してホワイトボードに書く、日々プレゼンテーションも刷新し、それらを駆使して、説得しています。もちろん、本社を説得する場合には「政治力」、つまり根回し力、ネットワーク力も必要になってきますね。

 

3. 翻訳力 理解力 相手の立場に立って考える力

「現場の声を本社に」「システム用語を現場がわかるビジネス用語に」、さらに各国で働く「英語が母語でないメンバーが伝えたいこと」をきちんと汲み取るなど、交渉や調整がとても多い私の仕事では、至る所で、この翻訳力が必要になります。言葉や文化、担う役割の違う誰かと誰かとの間に立ち、単に言語や用語の変換をするだけでなく、その人の真意を汲み取らなくてはなりません。「こう言い換えたら理解しやすいか」とここでも比喩も交えたりしながら、相手に伝わる言葉に訳して伝えるようにしています。

世界各国で行ってきたプレゼンテーション

世界各国で行ってきたプレゼンテーション


 

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<なぜサプライチェーン業務プロセスオーナーになったのですか?>  
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今の仕事につくことになるとは学生時代には思ってもいませんでした。日本語教師が夢で、本当は海外の大学院に進みたかったのですが、費用の面からやむなく就職活動に切り替えました。バブル崩壊直後の就職氷河期の中、総合職を希望し200社ぐらい応募したものの、最終面接に進めたのはわずか数社。その最終面接でも「うちの総合職は泥臭いから、女子大出身だと…」と言われ、悔しい思いを重ねました。なかなか内定が出ず、私も周囲も焦りを感じていた時に、偶然、間違えて参加したのが大手損害保険会社の一般職の説明会でした。縁って不思議です。なぜかその会社とはご縁があり、とんとん拍子で内定となり、私はその会社に就職することに決めました。

4年間はその会社の支店で一生懸命仕事をしました。仕事をどんどん任されるようになり、会社に貢献している自負もありました。そこで会社の総合職転換制度に挑戦したいと上司に申し出たのですが、ここでも「女性は一般職でいい」と一蹴され失望しました。頑張ってきた自分の思いをその会社のどこにも持っていくことができず、貯金がちょうど400万を越えたこともあり、今度こそ大学院留学しようと会社を辞めることにしました。

大学院留学の審査を待つ一方、ダメだった時のため日本語教師派遣プログラムにも応募しました。幸いにも両方合格したので、まずは日本語教師を経験してみることにしました。

どうしてもやりたかった憧れの日本語教師。でも、経験して初めて「日本語教師は私には違う」と気づきました。

日本語の授業プログラムは1学期毎に、新たな学生を担当し、教える仕事で、確かに学生の成長は見ることができます。でも、私には自分が何年も何十年もその繰り返しをすることが想像できませんでした。自分の成長を思い描けなかったのです。

そのショックはとても大きかったのですが、そもそも日本の大企業に失望して退職し、ある意味啖呵を切ってアメリカに来た私には、「違ったので日本に帰ります」とは言えませんでした。また、このまま帰国して、果たして自分が望む仕事やキャリアはあるのだろうかという不安もありました。

悩みに悩んでいた頃、MBAホルダーの友人に「将来総合職やグローバル人材として活躍したいなら、MBAを取得してみてはどうか。きっと君の経歴も今後手に入れるキャリアも違ったものになるはずだ」とアドバイスをもらったんです。その道が正解か否かは正直わかりませんでしたが、もう日本語学を専攻しても意味がないのは確かですから、言語学から経営学に舵を切り直し、昼は教師、夜は勉強で再受験、翌年MBAコースに進学しました。当時アメリカは金融バブル。多くの仲間が「ファイナンス」専攻を選んだのに対し、もともとパン屋の娘で保険会社で実体のない金融商品を扱うことにギャップを感じていた私は「オペレーションマネジメント」のコースを選びました。その時はまさかその選択が自分の人生を左右していくとも考えていなかったのですから、人生は面白いものです。

ところが、ちょうどMBA卒業を控えたタイミングで911が起こります。アメリカ中排外的なムードが突然広まりました。留学生向けの就職フェアがどんどん中止になり、アメリカでの就職は絶望的になりました。そんな時、西海岸では理系学生向けのIT就職フェアが開催されると聞き、藁をもつかむ気持ちで飛行機に乗りました。ここで偶然にも日本IBMのサプライチェーン部門のトップと面接できたのです。その時は「サプライチェーンってなぁに?」というくらい無知でしたが、モノづくりに誇りを持つその方と話が盛り上がり、内定をもらえたみたいです。「形のある自社製品」を扱いたいという私の思いに、どこか通じ合うものがあったのかもしれません。

IBM入社後は、トップに恥をかかすまいと必死でサプライチェーンやIBMが使っていたSAP社のERPについて学び、サプライチェーンアナリストとして、アメリカ・中国とのSAPプロジェクトや国際的な会議に自ら手を挙げて参加していきました。

在庫管理のマネージャかつそのトップの補佐として経営陣との会議に臨席させてもらうなど充実した日々だったさなか、IBMのパソコン部門が中国の企業に買収され、私の人生の流れはまた大きく変わることになります。買収に伴う人員整理が進むなかIBMに残ることになった私はソリューション営業に社内異動したものの、営業の仕事は私にはあわず、ストレスで押しつぶされそうになりました。
「サプライチェーンに軸足を戻そう」と願っても、形ある製品からサービス事業に方向転換しようとしているIBMに私の行きたいポジションはなく、現在の会社に転職しました。

現職では、日本支社でコンシューマ部門(風邪薬、歯磨きなど)のサプライチェーン(需要予測や発注など)を担うと同時に、ERPシステムの日本ユーザー代表として英国のサポート部門との交渉窓口もしていました。実は当時のシステムは改善してほしいことだらけ。そんな時、本社から今のプロジェクトのトップが来日したんです。ここだ!と思い、あれもこれも直訴したところ、「そんなに言うなら、君がイギリスに来て改善する側にまわってみたらどうか?」と言われたんです。想定外の展開でしたが、チャンスだと思い、渡英を決意しました。

英国法人に転籍し8年。現在もサプライチェーン業務プロセスに関する専門家としてSAPを使ったERPシステムを世界各国に展開するプロジェクトに参加しています。システムもだいぶ現場の現実にそって改善できたと自負しています。

経歴だけを見ると、順調にステップアップしてきたように見えるかもしれません。でも、私のキャリアは実はかなり行き当たりばったりなんですよね。自分では、まっすぐな階段でもらせん階段でもなく、ビルの非常階段のように踊り場のある階段を下から迫る火事から逃げ出すような気持ちでなんとか上ってきたキャリアだと思っています。

自分と外部環境の内外の変化のバランスを取ることを繰り返し、時には自ら変化を起こしましたし、逆に予想外に訪れた変化を受け入れねばならないこともたくさんありました。途中いくつもの踊り場で立ち止まり、これまで上ってきた階段とこれから上る階段を見つめる機会を持つことができ、また素晴らしい出会いやアドバイスをもらえたことで、自然と体力と思考力を養い、ここまで上ってくることができました。

サプライチェーンの女子メンバーと

サプライチェーンの女子メンバーと

 

 

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<サプライチェーン業務プロセスオーナーとはどんな仕事?>

弊社が世界展開している企業資源管理(ERP)システムのうち、特にサプライチェーン分野の業務プロセスをデザインしています。世界それぞれで異なる仕事のやり方を法令順守できる範囲で同じやり方に統一していく仕事です。そのため現場と顔を見て会議することも多く、ヨーロッパ、アジア、北米、そして南米と世界中を飛び回ってきました。

現在は、仕事の50%くらいがこれから新しくシステムを使い始める国のための仕事(どんなギャップがあり、何を調整し、どんなトレーニングが必要かなどを考える)、30%くらいがすでに統一システムを使っている国のトラブル解決、そして20%くらいが世界の業務状況とシステムをよく知っている人間として、ほかの戦略的なプロジェクトに知見を提供する仕事をしています。

仕事で日本語を使うことや、日本人であることがメリットになることは、めったにないです。ただ、どうしても欧米中心に物事が進みがちな英系企業において、現場、しかも欧米外出身であることは、大小様々な国とコミュニケーションしていく上で共感をもたれやすく、大きな意味があると思っています。

 

ITチームの皆さんと

ITチームの皆さんと

 

 

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<一日の仕事スケジュールは?>

8:00 ニュージーランドの受注プロセス変更の影響を、マレーシアのシステムサポート、イギリスのERPチームとで電話会議。

9:30 インドからの発注書フォーマット変更要望が他の地域に影響を与えないか会議で検討。

10:00-12:00  スイスの工場と物流拠点のプロジェクトについて「反省と今後に生かせる点」について会議

12:00 ランチ 同じERPプロジェクトで生産部門を担当している仲間と半分愚痴、半分情報交換。

13:00  会社上層部会議でシステム変更要望レビューをプレゼン

14:00-14:30  チームメンバーに輸入関連コスト処理のプロセスと、製品サンプルの資産取り扱いについて知識委譲

15:00  インド人の部下と隔週一回の1対1ミーティング。仕事や能力開発について。

16:00  スイスの工場のシステム稼動後問題がないか確認

16:30  エクアドルの販売促進品の資産取り扱いについて電話会議

17:00-17:30  ロシアの倉庫の住所変更がおよぼすシステムへのインパクトについて、システムコンサルタントにアドバイス

17:30-18:30  自分の仕事

19:00 自転車にて帰宅

 
 

ブラジルで会議後の食事

ブラジルで会議後の食事

コロンビアチームとの夕食

コロンビアチームとの夕食

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<仕事のやりがいや面白みはどんなことですか?> 

自分もかつてはユーザー側だったので、痛みをわかってあげられる人間として、同じ不満をもっているであろう世界中の各国のサプライチェーン担当者とやりとりができること。そして本社にその不満や「現場の声」を届け、実際のシステムに反映させることができることには、とてもやりがいを感じています。

また、過去のいろいろな経験を反映させ、仕事に貢献できるのも楽しいです。例えば、教師をした経験をプレゼンに生かすことができたり、MBAでかじったファイナンス知識を経理プロセスの話し合いに生かすことができたり、ガイジンであることを共感につなげられたりすると、今までのキャリア一つ一つが役立っていることに面白みを感じます。

 

インドのメンバーと週末のオフショット

インドのメンバーと週末のオフショット

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<もっとも嬉しかった経験はどんなことですか?>

中国の社員を相手にプレゼンをした時に「いつも本社から来るのは西洋人男性なのに、東洋人の女性で驚いた。しかも日本の法人で働いていた現場出身者が本社メンバーとして参画していて、他の本社メンバーと対等にやり合っているのをみて、今回はちゃんと欧米外の現場の意見が反映されるだろうと希望が持てた」と言われた時はとても嬉しかったですね。

また、イタリアで「あなたの英語のプレゼンテーションは、ネイティブと違って難しい英語を使わず、でもしっかり中身が伝わるからわかりやすい」と言われたのも、自分の中ではちょっと嬉しい瞬間でした。それまでネイティブの同僚に「お前の英語は日本語訛りが強い」とか冗談まじりに揶揄されていたのですが、考えてみたらプレゼンを聞く相手もネイティブではないのだから、むしろ平易な英語できちんと中身が伝わるほうがいいじゃないかと開き直れましたね(笑)。

 

<逆に今まででもっとも大変だった経験は?>

 

南米からあげられたシステムの変更要望が、イギリス出身でヨーロッパ内の物流しか知らない上層部に却下された時のことですかね。「ヨーロッパの工場からの輸送時間が数ヶ月にわたるため必要になる数値調整を自動化したい」というものだったのですが、自分も日本の現場で同じ痛みを感じていたので、アジアなどにも働きかけグローバル要望として提案書を出したのですが、やはり痛みが現実感をもって理解されなかったようで却下されてしまいました。英系企業としての限界を感じた瞬間でした。アジア・南米のメンバーに却下という結果を伝える時が、本当に辛かったのを記憶しています。

 

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<サプライチェーン業務プロセスオーナーの仕事の未来はどうなっていくと思いますか?>

ある程度の大きさの企業は、ほとんどERPシステムを使っています。なので、その中でサプライチェーンという業務プロセスを決定できる人、しかもいろいろな会社の「一番いいやり方」をアドバイスできる役目は、今後においても大事だと思っています。

私が今いるプロジェクトは永遠ではなく、世界展開の仕事には終わりがきます。しかし、今度は世界がそのシステムを使う上での「現場と本社の声の通訳」「ITチームの話す言葉と現場の話す言葉の通訳」という役割は、決してなくなることはないでしょう。メールやチャットにより世界中と簡単に話せるようになったものの、本当の意味で相互の意思疎通ができている多国籍企業はとても少ないと感じています。

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<今の仕事と同じように向いていそうな仕事はありますか?>

「違う二つ」をつなぐ仕事かなと思います。ただ、私はそこに自分の考えや感覚をプラスしてつなぐことに意義を感じるので、話した人の言葉をそのまましっかりと伝えなくてはいけない「通訳」は絶対できないと思います。でも日本からお客さんを連れていく「海外ツアーの添乗員さん」とかは絶対向いていると思います。自分の海外生活からの経験を生かして、文化や風習の違いを説明することで、ただ訪問しただけでなくその国を理解して帰ってもらえるかと。バスの中でいろんな国の歌も歌えますし!(笑)

新倉さん.
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キャリアカウンセラー舛廣純子の  シゴトのチカラ考察  .

新倉さんは高校の同級生。大学では別の学部であったため、じっくり話したのは、25年以上前のこと。彼女のキャリアの歩みを聴いて、そんな風にキャリアを重ねてきたんだ…。-彼女のたくましさに高校のころの活発な彼女の姿を重ねました。

サプライチェーンアナリスト?? ERPシステム?? 飛び交う耳慣れない言葉を一つ一つ丁寧に「翻訳」してくれる彼女。相手の表情から、相手の理解度を推し量り、「わかった」と相手がうなづくまで、たくさんの比喩を交え、目まぐるしい頭の回転で、弾丸トークを繰り広げるのも、「刺さるプレゼンテーション」もいわば彼女のお家芸。そうそう、高校のころからそうでした。

診断力」は、もちろんERPシステムの知識があってこそですが、相手の懐に入りこみ、本音を引き出すのも彼女の持ち味の一つ。どこか憎めない親しみやすさ、オープンマインドな姿勢、抜群の笑顔は、国籍や人種を越え「Natsumi!」と彼女と様々な国の人をつなぐ大切な要素なのです。

天性とも言えるコミュニケーションに関する武器を最大限発揮し、海外で活躍してきた彼女ですが、それだけでなく「悔しい思いをばねに努力できるチカラ」「信頼してくれた人に最大限応えたいと努力できる誠実さや責任感」「自分のキャリアを振り返り、次への一歩を戦略的に選べるチカラ」があったからこそ、キャリアの階段を力強く登ってこられたように感じました。

彼女のような社内コンサルタント的な仕事は社内呼称はあっても、なかなか一般的な名称で職種としてくくることができないため、職業図鑑のようなものでは扱われにくい職種です。でも、大きな会社であればあるほど、各部門の専門性は高まり、各部門に「困ったときの●●さん」のような仕事はあるものです。社内の人のチカラや助けになり、経営の効率化を担う ― 彼女の仲間への思いに、世界各国にいる仲間との数々の写真に、組織で働くことの醍醐味ややりがい、喜びを感じたインタビューでした。

 

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(次回もお楽しみに。毎月1回、第4月曜に更新します) =ーー

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第9話 秘書のチカラ – 上澤未紗さんの場合(2017.3.27)
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第22話 育爪士(いくづめし)のチカラ / 嶋田美津惠さんの場合(2017.11.14)
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第26話 ライフプランナー(生命保険営業)のチカラ / 日野悟さんの場合(2018.2.26)

 過去の舛廣純子さんの働きかたエッセイ 

TOOLS 13   自分を好きになるリフレーミング
TOOLS 19   後悔しない道の選び方(前編)
TOOLS 20  後悔しない道の選び方(後編)
 

舛廣さんってどんな人?

PEOPLE 04 舛廣純子(キャリアカウンセラー)
就職は子育ての最終章。就活生の親に読んで欲しい本を出版

 


舛廣純子

舛廣純子

ますひろ じゅんこ フリーランスキャリアカウンセラー。1972年、東京都出身。日本女子大学人間社会学部文化学科卒業後、化粧品商社に営業職として入社。会社の民事再生、自身の出産・育児を機に2 回の転職を経験。自らの転職経験からキャリア支援に関心を持つようになり、社会保険労務士、キャリアカウンセラーの資格を取得。2007 年、キャリアカウンセラー・講師として独立。大学生の就職支援・キャリア教育、社会人の転職支援・キャリア形成支援を中心に活動。支援学生の高い就職率とわかりやすいセミナーには定評がある。特技は長所探し。2013年12月に学研教育出版から『就活生に親が言ってはいけない言葉 言ってあげたい言葉』を出版。ブログ:http://ameblo.jp/shuukatsumamanoblog/