ちいさなお店をはじめたこと。【第28話】ちいさなお店の海外買い付け ③スケジュール決め&宿探しのパズル / ノマディックラフト ヨメ

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。気をつけなければいけないのは「時間がもったいないから」とギュウギュウに予定を入れすぎないこと。必ずしもイメージ通りに進まないのが買い付けの面白さであり難しさ。「ここに行けば絶対あると思ったのに、何にもない!」とか「地元の人に
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第28話 
ちいさなお店の海外買い付け
③スケジュール決め&宿探しのパズル

 

こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。

「海外買い付けに行ってみたい!」という方に向けて、私たちの体験からノウハウをご紹介するプチ・シリーズ、今回は「スケジュール設定と宿探し」のポイントについて触れてみようと思います。
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手描きの「予定表」を作って
現地での動きをイメージ

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前回は、渡航のためのチケット探しをどうすべきか…… という話に触れました。チケットを決める=行き先がはっきりする、ということですが、本当の買い付けのキモは「限られた現地での時間をどれだけ有効に使って行動するか」。

わざわざ海外まで行くからには「あれも見たい、これも欲しい」と欲望が湧いてきますが、必ずしも思いどおりにいかないのが買い付けの面白さであり難しいところ。「地図で見ると近いのに、実際は渋滞がすごくて移動に何時間もかかった」など、予想外の出来事が起こるのは日常茶飯事です。事前にリサーチした市場やお店などの情報を頭に入れる一方で、予期せぬトラブルがあったときに臨機応変にプランを変更する余白も残しておかなくてはいけません。

有名なバンコクの渋滞。

有名なバンコクの渋滞。反対側の路線はすいすい動いているのに、逆方面はぴくりとも動かない……という場合は珍しくありません。バンコク中心部での買い付けがある場合は、地下鉄駅の近くにあるホテルを選ぶ、という選択肢も頭にいれる必要が。

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私たちの定番的な方法は、まずA4の白紙を用意して手描きの予定表を作ること。

① 最初に記入するのは飛行機の発着時刻と、空港入りしなければいけない時間。
② 次に週末のみ開催される市場など、絶対にその日に行かなければならないイベントと、それに伴う移動時間を記入します。

①②の「動かせない予定」をスケジュールの骨格にしつつ、残った空白の時間をどう効率よく埋めるか、ここが予定決めのポイントとなる部分です。

ベトナムでは列車移動をすることも。

ベトナムでは列車移動をすることも。寝台列車なのでホテルの心配はない反面、往復でほぼ一日つぶれてしまうので、現地でよい物が見つかるかどうか毎回緊張します。

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次に行うのが

③ 現地の地図をプリントして、行きたい場所にマーキングをすること。

すべて印を付け終えたら、定休日がいつなのか、営業日時の確認をします。ここまでの作業を終えると、まわるべきエリアはこのあたり、という重要エリアが、固まりとなってはっきり見えてくるので「このエリアでどのお店も定休日がないのはこの期間だな」とか「AグループとBグループは車を使えば1日でまわれそう」など、より過ごし方のイメージが具体的になってきます。

 

 

買い付けの「一番の目的」はなにか
優先順位を考えてみよう

 

ここで気をつけなければいけないのは、「時間がもったいないから」とギュウギュウに予定を入れすぎないこと。というのも、先に触れたように、必ずしもイメージ通りに進まないのが買い付けの面白さであり難しさ。「ここに行けば絶対あると思ったのに、何にもない!」とか「地元の人に良さそうなお店の情報を聞いたので、滞在中に行ってみたい」とか、現地入りしてみないと分からないことが絶対に発生します。

スケジュールの中に、半日ほど予定のない時間をあらかじめ組み込んでおき、トラブルがあったときのフォローや新しい情報に対応できるようにしておくと、より満足度の高い時間が過ごせます。もちろん「何もトラブルがなかったら、思い切って半日は遊ぼう」とか「時間が空いたら、一店舗だけ少し離れた場所にあるこの店に行ってみよう」など、予定が空いたままだったときにどう過ごすかについても、合わせて考えておくとよいと思います。

 

郊外のマーケット

わざわざバスに4時間揺られて出向いた郊外のマーケット。初めての訪問で期待していたのですが、あまり良い物に出会えず帰り道はちょっぴり落ち込みました。

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もうひとつ、忘れてはいけないのが「梱包や発送にかかる時間」です。すべて手持ちで持って帰る場合でも、大量の荷物をパッキングするにはそれなりに時間が必要です。また、現地から郵便や宅配業者を利用する場合は、段ボールを用意したり、業者に行って重さを量ったり、書類を記入したりする時間もかかります。

また、帰る直前の最終日に「梱包&発送」をすると効率がよく思えますが、業者に行ってみてから「うちにある段ボールに入れると、半分スペースが空くから料金がもったないよ」と言われて、あわててハンドキャリーで持ち帰る予定のものを箱詰めに切り替える…… など、やはり予想外の出来事があることも。発送はギリギリにせず、最終日の一日前くらいにすると安心です。

意識的に予定の余白を作りつつ、余白が不要になったときはどう埋めるかについてもイメージしておく。この「余白の用意」をするために必要なのが、優先順位を決めること。マストで見つけなければいけないものは何か、何なら後回しにしていいのか。これが自分たちのなかで決まっていないと、予想外の出来事に遭遇したときに「どうしよう!」と慌てて身動きが取れなくなってしまいます。

たとえば「今回の買い付けは、オリジナルアイテムを作るために、少数民族の衣装に使われる布地をこのくらいの量見つける」というのを最優先にし、次の目的を「少数民族のバッグやポーチなどを見つける」にしたとします。旅の半分を超した段階で、マストで見つけなければいけない布地がまだ見つからない、という場合、スケジュールを再度見直す時間を取ります。

この場合「余白の時間はすべて布地探しに充てる」という方法もありますし、「二日目に、とても素敵なバッグやポーチを扱うお店を見つけたので、もし布地が十分に見つからない場合は、最終日の午前中に空けた余白時間に、そのお店に再訪して余った布地の予算でバッグやポーチを買うことで対応しよう」という考え方もできます。もちろん訪れた機会を活かすために、行く先々で「こういう布地はどこにあるか知ってますか?」と聞き込みをするのも忘れずに。

なにしろ、わざわざ海外まで来て手ぶらで帰るのが一番の時間の無駄なのですが、一方で、いくら布地が優先でも気に入らない布を買ってもしょうがありません。現地の状況に応じて、予定や予算を柔軟に入れ替えていくことが必要で、それは毎回パズルのよう。部屋に戻って店主とふたり、買ったものと地図をにらめっこしながら「さて明日はどうしようか…… 」と作戦会議をするのが毎晩の行事。これがベストな答え、というものがないからこそ、自分たちのなかで優先順位がついていることが、プラン作りの大きな助けになるように思います。

 

買い付け品がぎっしり

日本に戻って、駅から我が家までの帰り道。バッグの中は手荷物で持ちかえってきた買い付け品がぎっしり詰まっています。

 

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宿は買い付けの作戦本部
安心・安全・便利なところで

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さて、あちこち歩きまわり、大荷物を抱えて戻ってくる毎日のなかで、ホッとひと息つける大切な場所が「宿」です。宿選びのポイントはいくつかありますが、最初に考えるべきは「立地」ではないでしょうか。私たちは、最も時間を割きたく、最も買い付け量が多そうな場所からアクセスの良いところ、という所から宿候補の絞りこみをスタートします。一回で買い付けが終わらず、宿と市場を二回、三回と行き来したり、午前中に大量に買い付けした物をいったん宿に置いてまた午後出かけたり……、ということはしょっちゅうあるので、アクセスのよさは代えがたいメリットなのです。

もうひとつ欠かせないポイントが「安心・安全」。というのも、買い付けた品は部屋に置いておくことになるため、不特定多数の人が自由に出入りできるなど、安全性に不安が残る宿は選択肢に入れられません。ある程度セキュリティのしっかりした中級ランク以上のホテルを選ぶのがベターです。また、閑静な立地のホテルだと、帰りが遅くなったときに人通りがなくて不安に思うことも。夜まで活動できる地域に行く場合は、人通りの多いエリアにあるホテルのほうが安心です。

 

 

バンコクの宿泊先の近くにあった屋台ゾーン。

バンコクの宿泊先の近くにあった屋台ゾーン。遅くまでたくさんの人が食事をしているので、いつも活気があり安心です。もちろん、ここで夕食をいただいた日も!

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とはいえ、初めて行く場合、どのホテルがベストかという判断がつきづらいもの。私たちはインターネットで事前予約をしていくことがほとんどですが、日本で予約した部屋がイメージと違うリスクもあります。現地に着いてから観光案内所などを利用して部屋を見てから決める、ということも可能ですが、「空室がない」と言われた場合のリスクと比較すると二の足を踏んでしまいます。

できる努力としてはホテルの情報を比較しながら、目星をつけたホテルの部屋や周辺の写真を検索して比較、ホテル予約サイトの口コミもじっくり読み込むこと。予約サイトによって値段が倍以上変わることもありますし、サイトAでは口コミの評価が高いけど、サイトBには不安なことも書いてあった、というケースもあります。

その一方で、あまり心配しすぎると決められないので、ある程度「この値段でこの内容ならいいかな」と納得できたところで最終判断するようにしています。参考までに、私たちがよく行くタイ・ベトナム・ラオスのエリアであれば、1泊3000円(2名料金)も出せば日本のビジネスホテルより広くてキレイなホテルが見つかることがほとんどです。

 

『ビクトリーモニュメント』駅近くのホテル。

バンコクの宿泊先にしたのは『ビクトリーモニュメント』駅近くのホテル。モダンで清潔、カードロック式で部屋には大きなソファと手足が伸ばせるお風呂、セキュリティボックスも完備で1泊3500円。旅の終盤だったので、荷物も増え、疲労も溜まっているだろうと予想し、快適さを重視して選びました。

 

ベトナム北部のホテル。

こちらはベトナム北部のホテル。価格は1泊2000円を切る値段で、ベッドだけのシンプルでこぢんまりとした部屋でしたが、清潔で静か。快適に就寝できました。

 

 

最初に触れたとおり、買い付け旅において、泊まる部屋はホッとひと息つくための大切な空間です。初めての買い付けでは値段の上下であまり冒険しすぎず、確実に安心できそうな場所を選んで、次回以降のホテル選びの判断基準にする、という感覚でよいのではないでしょうか。

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以前、タイ・チェンマイで泊まった宿では、日本人女性のオーナーに上手なマッサージ店を紹介してもらったり、バンコクの宿ではすぐ近くの通りに毎晩イサーン料理(タイ北部)の屋台が出て、そこでビールを飲みのみひと息つくのが楽しみだったり。

ベトナム・ハノイで泊まった宿には、受付に流ちょうな英語を話す20代くらいの女性がいて、ふとした合間に何度も雑談をしました。「東日本大震災があり、原発事故があった後も日本はすぐに立ち上がって前に進んでいるのを見てすごいと思う」と言ってくれたこと。日本人は働き者というイメージがあるけど、ふだんの労働時間の話題になったら「ベトナム人のほうが、休みが少ないかも!」と笑っていたこと。日本に帰る日に、持ってきた基礎化粧品(オールインワンの保湿ジェルでした)を「日本のコスメ使ってみる?」と渡したら、ビックリするくらい喜んでくれたことも。

買い付け旅は忙しいし、目まぐるしいのですが、そこに行かなければ出会えない物があり、人との触れ合いがあるのが本当に楽しく、毎回「帰りたくない!」と思ってしまうほど。丁寧にプランを立てるのはもちろん大切ですが、最後は「とはいえ、行ってみないと分からないもんね!」という大らかな気持ちで、現地でのまだ見ぬ出会いを満喫してみてくださいね。

次回は、物探しとの価格との関係について触れたいと思います。どうぞお楽しみに!


(月一第四週土曜日更新です)

 

 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編(2016.1.30)
第17話 始まった… 年に一度の確定申告(2016.2.13)
第18話 手仕事は同じじゃないから美しい~『ORDINARY』とコラボグッズを作ったこと(2016.3.11)
第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
第20話 生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>(2016.6.18)
第21話 夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。(2016.7.20)
第22話 おしゃれに見せるって難しい! イベントのディスプレイで四苦八苦。(2016.8.26).
第23話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪前編≫(2016.8.26)
第24話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪後編≫(2016.11.26)
第25話 ちいさなお店がイベントに出た1年を振りかえる(2016.12.24)
第26話 ちいさなお店の海外買い付け① 買い付け方法と情報集め(2017.01.30)
第27話 ちいさなお店の海外買い付け②航空券の準備 (2017.02.28)

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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
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ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/