ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第21話】夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。

好きなことだからこそ一生懸命になりすぎて楽しめなかったり、失敗したくない思いが強すぎてやりすぎてしまったり、意外に「楽しむことってかんたんじゃないぞ…」と気づかされることがたくさんありました。sasamoto_s

 

第21話 夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。

こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。

最近イベント出店やら、ライター業の出張やらが相次ぎ、2週間に1回アップしていたこの連載も月イチにペースダウン中。器用にこなせない自分に「うぬぬ…」と悔しい部分もありますが、各地で皆さんと会えるようにがんばりますので、どうか引き続き応援のほど、よろしくお願いいたします!

そんな調子で慌ただしい日々が続く我が家は、最近いつも荒れ放題。雑誌やウェブサイトで見るステキなインテリアのお部屋と、自分の部屋の惨状とのあまりの違いにため息をつくと同時に、自分のダメダメぶりに本気でがっくりする毎日です。

ノマディックラフトは店主もヨメも、それぞれ仕事をこなしながらの運営=ダブルワーク。うまくいけば一方の仕事が煮詰まっているとき、もうひとつの仕事がよい気分転換になるのですが、両方とも煮詰まってしまう場合だってあります。それでも何とか乗越えて、やってゆかねばなりません。

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忙しいと夫婦でイライラ!
“煮詰まり注意報” 発令中

ノマディックラフトをスタートした当初は、不定期でイベントに出ることが活動の中心。シフト制の飲食店で働く店主と、フリーランスでライターをしているヨメは、予定を自分たちで管理しやすいため、よく休日のタイミングを合わせて映画を観に行ったり買い物に行ったりしていました。が、西小山にアトリエショップを構えてからはペースも一変。毎週月・木・土(不定休)と少ないながらもオープンアトリエの日を作ったことで休日を返上、ふたりで分担して店番を行うように。

というのも、もともと住宅街のなかという落ち着いた立地です。やらなければいけない諸々を終えてしまえば静かなものですから、店頭の時間を「半休日」的な位置づけにして、お客様がいらっしゃらないときはゆっくり刺繍をしたり、読書をしたりすればいいじゃないか、と思っていました。

しかしおかげさまで、イベント出店の機会が増え、ネットショップをご利用いただける機会も増え。それに伴い、新商品の企画や海外からの仕入れ、オリジナル商品の生産などなど仕事量も増加。お店番の時間は、想像していたほどのんびりしていないのが現状です。

週2回店頭にいる店主は、ネットショップの更新や仕入れなど海外とのメールのやり取り、その他の事務作業。新しい雑貨や衣類の制作なども行っています。週1回担当のヨメは、お店番をしながらライター業の原稿を書いていることが多いでしょうか。いわゆる「何もしない休日」は、ヨメの実家に帰省するとか、年末年始をのぞけば、しばらくとっていないかもしれません。

海外から商品が届いたら、伝票と内容が合っているか照会しながら、壊れた物がないか検品。問題があれば連絡のEメールを入れる準備をします。

 海外から商品が届いたら、伝票と内容が合っているか照会しながら、壊れた物がないか検品。問題があれば連絡のEメールを入れる準備をします。

 

会社勤め時代のような明確な休日がない一方、自分たちの都合に合わせてショップの運営は柔軟に行っています。ヨメに出張が入ればお店のオープン日を変更させてもらったり、店番の担当日を店主と変えっこしたり。まだスタッフを雇って常時オープンできる規模ではないのでいたしかたないのですが、それでも時々イベントに来られたお客様から「この前、お店の前まで行ったら休みでした!」なんて言われると、本当に申し訳ない気持ちに…。

ふだんはそうやってやりくりしているのですが、忙しい時期は重なるもので、各地で活発にイベントがある時期と、それぞれの仕事の繁忙期にもなる夏休みの前後などは(まさに今ですね)、夫婦間にギスギスした雰囲気が漂い出すのも事実。ヨメの取材や執筆が忙しく、イベントの準備をぜんぜん手伝えないときは、ひとりでタグ付けや荷物詰めを行う店主はカリカリしはじめますし、イベントと原稿の締め切りが重なって、深夜まで原稿を書かざるをえなくなるヨメの疲労も溜まりがち。当然、家事もやっつけ気味になるため、部屋は散らかり、寛げる雰囲気は減少する一方。「いつも夫婦一緒で、仲良しですね!」なんて言われる我が家ですが、ふたりとも停滞した気分で、言葉少なに過ごすことはしょっちゅうです!

サボるのも一筋縄では難しい
意外にマジメな自分たち

夫婦で一緒に好きなことを仕事にする。それは楽しさをふたりでシェアできる反面、煮詰まりだすと、寛ぎの場であるはずの家庭に逃げ場がなくなってしまうのが難しさです。自分たちで何でも決められる=うまく行かないときも自分たちでどうにかしなくてはいけない。そのプレッシャーはなかなかに重く、肩にのしかかってきます。

そんな煮詰まる瞬間を、今まではこんなやり方でどうにかこうにか乗越えてきました。

◆意識して「サボる」

「マジメにやれ!」と言われそうですが、実は意外にサボれないのが自営業者の生活。というのも、売上げが下がれば生活できませんし、自分の代わりがいないため、体調不良や仕事上のミスもダイレクトに跳ね返ってくる怖さがあるからです。加えて「もっとああしたいな」と、上を見ればキリがないため、身のまわりには「やらなければいけないこと」だらけ。ヨメも「フリーランスになったら、他人の目がないのでダラダラしてしまいそう」と当初は思っていたのですが、むしろ、時間を仕事にばかり使ってしまいがち。

しかも、夫婦の片方が仕事をしていると、もう片方は「なんかひとりで休むの悪いな…」と思ってしまうあたりも煮詰まりには悪影響。イヤな空気が夫婦の間で漂ってきたら、「このあたりはイベントが続くので、この日はお店を休みにして半日は片づけ。終わりしだい休養をとる時間にしてのんびりしよう」など、サボり日を提案。オンとオフの線引きをしてバランスを取るように気をつけています。

このあたり、仕事人間のヨメは線引きが下手くそで、反省しきり。切り替えの大切さを知っている店主から、よく学ばされています。

オリジナル商品の製作に使う生地の選定中。一生懸命になるほど、手を止めるタイミングを失って、ついつい長時間の作業に。

オリジナル商品の製作に使う生地の選定中。一生懸命になるほど、手を止めるタイミングを失って、ついつい長時間の作業に。


◆家や店の外に出て「夫婦で」友人に会う

夫婦で煮詰まりだすと「前と違うこと言ってるよ!」とか「この前お願いしたこと忘れたの?」のような、些細なことでもイラッとなりがち。そういう険悪モードに入ると、大切な話し合いもうまく進まず、どんどん悪循環にハマります。

そういうときは、気分を変えてお友だちに会いに行くのが一番の特効薬。毎日仕事漬けになりがちだからこそ、仕事とは関係のない話で盛りあがると、単純に元気が出ます。おいしいものを食べながら、会話を楽しんでいるうち「なんかバカバカしいことでイライラしちゃったな」と煮詰まりモードを脱出、どれだけ視野が狭くなっていたか、独りよがりになっていたか、気づかされるのを実感します。

その一方で、仕事の話になるのも決して悪くありません。まずは「煮詰まっていることや悩みを口に出し、それを自分の耳で聞きなおす」という行為そのものが、置かれた状況を客観的に捉え直すきっかけになるので、話ながら「あ、でもこれ私が悪いんだな」と気がつくことも。さらに相手が物づくりに関わっている、自分で商売をしている友人であれば、同じ悩みを共有する立場から本音を話してくれたり、アドバイスをいただけたりすることも。

各地のイベントに出ることで、夫婦共通の「小商い仲間」が増えていくのは、こういう点でとても大きな助けをいただいています。大人になるにつれ、「せっかく楽しい時間なのに、自分の悩みの話をするのは悪いかな」とか、気を使う場面も増えてきます。だから言わないのではなく、弱音を吐くときは勇気を出して弱音を吐き、ちゃんと元気になる。そして今度もし友人に元気がないときは、バックアップする側にまわる。自分で働く人同士のそんな温かなつながりが、少しずつ生まれてきているのを実感します。

下北沢『sotto co』にて。イベントを通じていただける様々な出会いが、私たちの視野を広げてくれます。

下北沢『sotto co』にて。イベントを通じていただける様々な出会いが、私たちの視野を広げてくれます。

 

シンプルに楽しむって
かんたんじゃない、と学習中

 

そしてもうひとつ、ちいさいお店を続けていく最も根本的な原動力になっているのがこれです。

◆馬の前に「ニンジン」を吊るす

本来好きなことをやっているはずなのに、「業務」に追われると、いつの間にか「やらされている感」に支配されて、つまらなくなってしまう。煮詰まりの原因の多くは、そんな本末転倒マインドに大きく関わっています。そこで忘れないようにしているのが、馬の前にニンジンを吊るすように、楽しみながら働ける要素を仕事のなかに組み込むこと。たとえば、あえて遠方のイベントに出店し、前後に休みをくっつけて旅行気分を楽しんでしまうのもそのひとつ。これこそ、自分で仕事を選べる自営業のだいご味ですから「どうせなら楽しく!」という気持ちだけは忘れないよう、折につけ振り返るようにしています。タイやベトナム、ラオスに買付けに出かける旅は、この活動を始めるきっかけとなった「少数民族の手仕事は美しい」という初心を思い出す、私たちの最高の「ニンジン」なんですよ!

 

旅の空気を感じながら、ステキな手仕事を探しに行く。それが私たちにとって一番の「ニンジン」です。

旅の空気を感じながら、ステキな手仕事を探しに行く。それが私たちにとって一番の「ニンジン」です。

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このちいさなお店を始める前は「好きなことを人生に増やして、楽しもう!」とシンプルに思っていました。でも実際にスタートしてみると、好きなことだからこそ一生懸命になりすぎて楽しめなかったり、失敗したくない思いが強すぎてやりすぎてしまったり、意外に「楽しむことってかんたんじゃないぞ…」と気づかされることがたくさんありました。

後になってから「もっと気楽に楽しめばよかったんだな」なんて後悔することはしょっちゅうです。前もって準備をするとか、気を引き締めるとか「キチンと」意識を持つことは生活を営むうえでとても大切なことなのですが、そこに頑張るほど息が詰まります。ある程度の準備をしたら、「あとは何とかなるさ!」と腹をくくって余白を楽しむ。そういう余裕を身につけられるようになれば、私たち夫婦も一人前なのかもしれませんね!

 

横浜・野毛の『artmania cafe gallery yokohama』にて。夫婦ともども、余裕を身につけられるように日々修行中です!

横浜・野毛の『artmania cafe gallery yokohama』にて。夫婦ともども、余裕を身につけられるように日々修行中です!

次回もちいさなお店からお話をお届けしますね!どうぞお楽しみに!
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ノマディックラフトのイベント出店情報

なないろさん、ありがとう~なないろハウス仕舞のうたげ~
7月23日(土)・24日(日)11~17時 ※雨天決行
ノマディックラフトでお取り扱いさせていただいている、マクラメアクセサリー『wokini』さんのご縁で、国立のシェアハウス『なないろハウス』さんのイベントに出店します。たくさんの人に愛された同シェアハウスが取り壊しになるにあたり、住人の方々が中心となり、最後を見送るこのイベント。体に優しいフードやクラフト、シタールやチェロなどのライブも行われます。その他、夏のイベントが目白押し!詳細は随時ご連絡させていただきます。Hoshi Ya マルシェ
8月16日(火)~23日(火)

アースセレブレーション2016
8月26日(金)~28日(日)

金沢文庫芸術祭~子どもの未来は地球の未来~
9月18日(日)

(次回もお楽しみに。隔週土曜更新です)
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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編(2016.1.30)
第17話 始まった… 年に一度の確定申告(2016.2.13)
第18話 手仕事は同じじゃないから美しい~『ORDINARY』とコラボグッズを作ったこと(2016.3.11)
第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
第20話 生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>(2016.6.18)

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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/