ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第8話】小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?

ちいさなお店をはじめたこと。

sasamoto_sお客様に喜んでいただきつつ、現地の人たちも笑顔になる価格はいくらか?なおかつ、私たちがこの活動を健全に続けていける利益はどのくらいか?少数民族の手仕事が持つ芸術的価値を、価格としてどう捉えるか?いつも夫婦でウンウンうなりながらの作業です。

 第8話 小商いでも管理は大切。入るお金出ていくお金何がある? 

 

こんにちは。ノマディックラフト ヨメです。

夏ここ数回は買付けや商品のことについて書かせていただきましたが、今回は当連載のテーマである「働き方」にググッとよって、ちいさなお店を営むうえで、日々しているお金とのつきあいについて触れてみようと思います。

 

苦手」と思うとなおツライ!
売上+経費の管理 

今でこそ、自分で帳簿つけができるまでに成長いたしましたが、もともとヨメは数字が大の、大の(繰り返します)苦手! 文章であれば、パッと見るとある程度は頭に入るのですが、相手が数字だと急に脳の活動能力が低下。恥ずかしながら、文章の3~4倍の時間をかけないと理解できないこともしばしばの。

10年前より、フリーランスのライターとして働き始め(※ 第2話参照)、「そうか、これからは自分で確定申告しなければいけないんだ」と愕然。本を片手に経理のイロハを学び、どうにかこうにか今日までやってきましたが「もういやだ~!! 」と叫んだのは、一度や二度ではありません。

それが、ノマディックラフトをはじめるにあたり、ライター分(ヨメが事業主)、お店分(店主が事業主+飲食店での給与収入)、事業ふたつ分のお金の管理をすることになろうとは……。

なんて言ってますが、私たちが営むのはあくまで週三営業のちいさな店。プロの税理士さんから見たら「そんなに大変じゃないでしょ!」とお腹をかかえて笑われそうな気も。お金にまつわる作業は、だいたいこんなことをやっています。

◆収入&支出の管理 
収入源が複数ある私たち。お金の動きが分かりやすいよう、銀行口座を分けて管理しています。

・メガバンク① 店主名義 ≪ 私生活口座 ≫
店主の飲食店での給与収入+ヨメからの生活費分振込みが入ります。家賃や光熱費、食費など日常生活全般の引落しはここから。緊急時に使う用の積立貯金も。

・メガバンク② ヨメ名義 ≪ ライター口座 ≫
ヨメのライターとしての原稿料が入ります。毎月ここから生活費のヨメ分担分をメガバンク①に振込みます。老後用の積立貯金はここ。

・ネットバンク お店名義 ≪ ノマディックラフト口座① ≫
お店の売上げが入ります。店頭で使う現金の出し入れや、通販の売上げをまとめます。仕入れ先への支払いもここから。

・ゆうちょ お店名義 ≪ ノマディックラフト口座② ≫
お店用のサブ口座。通販の支払いでゆうちょ希望の方向けの用途が主。

・金庫 ≪ ノマディックラフト口座③ ≫
店頭の売上げを入れておいたり、お釣りを管理する金庫。お店で使う消耗品を買う、イベントで駐車料金を払うなど、経費として使う現金もここで管理。

 

現在、ネットバンキングと連動したオンラインの経理サービスを利用しているので、銀行口座の出し入れは自動的に反映されます(便利!)。あとは領収書とレシートを見ながら、経費の支出をパソコンで入力します。処理が終わった領収書・レシートは、月ごとにまとめて封筒に入れ、補完しています。

 

数字オンチのヨメにとって、確定申告のために複式簿記をつけるのは大きなチャレンジでした(ホント苦手なんです…)。そのとき、参考書として使っていた本(右)。フリーランス向けなので、会社に向けた経理の本には書いていないことがいっぱいあって、ボロボロになるまで使いました。左はオンラインの経理サービスを導入するときに読んだもの。結局は、実際に使いながら覚えた気がします…。

数字オンチのヨメにとって、確定申告のために複式簿記をつけるのは大きなチャレンジでした(ホント苦手なんです…)。そのとき、参考書として使っていた本(右)。フリーランス向けなので、会社に向けた経理の本には書いていないことがいっぱいあって、ボロボロになるまで使いました。左はオンラインの経理サービスを導入するときに読んだもの。結局は、実際に使いながら覚えた気がします…。

 

このとき「店のトイレットペーパー=消耗品費」など、何をどの費目に計上するか、選ぶ必要があります。「お店のディスプレイに使うS字フックは消耗品費? 広告宣伝費? 」など、迷ったときは本やネットで検索しながらの作業です。

 

 まだまだ続きます
 在庫の管理  

 

◆在庫の管理
何を・どこから・いくらで仕入れたか把握するとともに、期日までに支払いを行います。

 

・国内仕入れ
商品が届いたら、納品書の明細と照らし合わせて、内容と数が合っているか、B品はないか検品します。時間がたつと、自分たちの不注意で商品をなくしたり壊したりしてしまったのか分からなくなるので、届いてすぐに行うのが鉄則。問題があれば、仕入れ先に連絡をします。届いた請求書は仕入れ先ごとにファイルにまとめ、指定の入金期日までに商品代金を振り込みます。生地からオリジナルで商品を作るときは、商品仕入れ同様、縫子さんに縫製工賃を支払います。

 

・海外仕入れ(メール注文)
メール注文の場合は、①クレジットカード払い②PayPal③国際送金のいずれかを利用。③は手数料が目の玉飛び出るほど高いので、できるだけ①②のルートを開いてもらえるように働きかけています。海外から届いた商品の場合、検品で問題が発覚しても、返品&交換がすぐにはできません(戻す送料がバカになりませんし)。なので、問題があった商品の写真を撮ってメールで送り、つど対応を相談するような状況です。次の仕入れのときに値引をしてくれる、などの場合もありますが、運が悪かったと諦めることもあります。

 

・海外仕入れ(現地買付け)
ショップで買うときは「レシートちょうだい」というと、たいてい控えをくれるのですが……私たちの扱っている商品は主に東南アジアのもの。タイ語やベトナム語で書かれたレシートをもらっても、何のことやら分かりません。また、市場での買い物ではまずレシートがもらえませんし「サービスで1個多く入れといたよ」とか「まとめ買いしてくれたので少し割り引くね」とか、値段がバチッと決まっていません。そこで、買付けには必ず「買付けノート」を持参し、日付・買ったもの・個数・値段をメモするようにしています。

 

4月の出張で使った買付けノート。ジーンズの後ろポケットに突っ込んだりするのでヨレヨレ。ボールペンとテープのりを一緒に持ち歩き、買ったそばから詳細を記入し、レシートをベタベタ貼っていきます。かかった交通費や、暑さ対策の飲料水代など、支出はすべてメモしておき、後から経費・私用に振り分けます。

4月の出張で使った買付けノート。ジーンズの後ろポケットに突っ込んだりするのでヨレヨレ。ボールペンとテープのりを一緒に持ち歩き、買ったそばから詳細を記入し、レシートをベタベタ貼っていきます。かかった交通費や、暑さ対策の飲料水代など、支出はすべてメモしておき、後から経費・私用に振り分けます。

 

 

 お客様にも、現地の人にも、
私たちにもいい循環になる
 価格はいくらなのか  

◆値段決め
買い付けた物、オリジナルで作った物に関しては、自分たちで値段を決めなければいけません。

海外で仕入れた物をいくらの値段で販売するか決めるために、まずはエクセルを使って、買い付けた国やエリアごとに商品の一覧表を作ります。そこに、現地での仕入れ価格を日本円に換算できるよう、当日のレートを使った計算式を入れて①「仕入れ価格」を出します。そこに買付けに要した出張費などの②「経費」、私たちがかけた時間や労力にあたる③「労務費」を加えます。この金額にどれだけの利益を設定するかで値段が決まります。

といっても数学の公式のように「一律○%の利益を乗せて、はい○○円!」と決まるわけではありません。

「いくら原価が高くでも、このポーチを5000円に設定したらほとんど動かないんじゃない? それよりは、利益率を下げて3000円にして買いやすくしたほうが、現地の人たちに仕事を発注する機会が増えるし、結果として売上げにもつながるかも」

とか、一つひとつ検証しながらの作業です。

お客様に喜んでいただきつつ、現地の人たちも笑顔になる価格はいくらか? なおかつ、私たちがこの活動を健全に続けていける利益はどのくらいか? 少数民族の手仕事が持つ芸術的価値を、価格としてどう捉えるか? いつも夫婦でウンウンうなりながらの作業です。

値段を決めた後は、どれだけ売れて、どれだけ残っているかを数える「棚卸し」の作業もあるのですが、これは細かい話なのでまたの機会に。

 

ベトナム北部、サパの市場にて。計算機を片手に、値段を聞きながら日本円に換算するといくらになるのか、持帰って販売するならどのくらいの値段になるものか、などイメージしながら商品を探します。「すごいかわいいけど、販売するにはとてもじゃないけど高くなっちゃう!」というアイテムは私物になることも…すみません!こればかりは役得ということで!

ベトナム北部、サパの市場にて。計算機を片手に、値段を聞きながら日本円に換算するといくらになるのか、持帰って販売するならどのくらいの値段になるものか、などイメージしながら商品を探します。「すごいかわいいけど、販売するにはとてもじゃないけど高くなっちゃう! 」というアイテムは私物になることも… すみません! こればかりは役得ということで!

 

*****

余談ですが、もともとのヨメの目論みとしては「お店にまつわる日々の帳簿つけや現金の管理は店主にやってもらって、まあ確定申告の手伝いくらいはヨメがしてもいいか。お店の運営状況が肌で感じられてよいだろう」くらいの気持ちで「店の経理は店主の仕事」と思っていました。しかし、やってみて分かったのですが、店主はこんなヨメにさらに輪をかけて数字が苦手でして……。

本人にもその自覚は十分あったようですが「やってみる」という前向きなお返事(表情は暗めでしたが)。しかし、いざ始めてみると、慣れない作業に四苦八苦。そっちに時間を取られて、肝心の制作作業がおろそかになるハメに。これでは本末転倒、と経理はヨメがまるっと引き受け、店主はリメイクの制作やネットショップの管理などに専念してもらうスタイルにまとまりました。

手前味噌ですが、店主が少数民族の布や刺繍をもとにチクチク作るオリジナルは本当にかわいいので、もっともっとたくさん作ってほしいし、いまは「分担してよかった!」と思っています。

最後にひとつ。経理を外注する、という方法も検討しました。実際ライターの仕事のほうでは、領収書とレシートを送ると正しく仕訳して帳簿を作ってくれるサービスを利用してみたこともありました。でも結局、自分でやろうと思い直したのは、苦手なりに続けるとお金の流れが見えてくるのが分かったからです。同時に、ずっと心のどこかにあった「お金のことは苦手!」という意識がうすらいで「お金の流れは、自分たちの現状や課題を見るためのツールなんだ」と自然体で捉えられるようにもなりました。体を動かすのには食べ物が必要なように、好きなことを健全に続けていくエネルギーとしてお金がある。いまはそんな気持ちです。

といいながらも、机の上にあるボックスには、数か月分のレシートと領収書が…… 頑張って入力しなきゃ!

さ来週もまた、ちいさなお店のことをお届けいたしますね。どうぞお楽しみに!(了)

 

 ノマディックラフトのイベント出店情報 

安穏朝市 
@東京中央区・築地本願寺前広場
9月20日(日) 9~15時
詳細は  http://annon-asaichi.blogspot.jp
毎月1度、本願寺さんの広場で開かれる暮らしの温もりや匂いを感じる素朴な朝市です。採れたての産直野菜から暮らしの雑貨までが揃います。私たちも看板犬レラと一緒に、ゆるゆると出店中。築地の場外市場からも歩いてすぐ。気持ちいい休日の朝、ぜひ足をお運びください。
.テラデマルシェ
@東京台東区・宋雲院 10月24日(土)、25日(日)11~17時
http://terademarche.jimdo.com/
上野駅は浅草口から徒歩5分。台東区役所のすぐそばにある、風情あるお寺・宋雲院さんで開かれる手作り市です。作家が作る雑貨やアクセサリー、素材にこだわったスイーツなど約50ブースが集合します。二回目の出店となりますが、今回は看板犬レラも連れて行けそうです。広いお寺の本堂に、作家さんたちの作品がずらりと並んで見応えがありますよ!

 

(次回もお楽しみに。隔週土曜更新です)
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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)

 

オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/