【第166話】お花畑の真ん中で / 深井次郎エッセイ

ふわふわ

ふわふわいこう

のろけを超えて
批判までいくのは
バランスをくずしている

ーーー

太い道を外れる不安と同時に、もうひとつ過剰な希望もあるものです。だから前に進めます。お花畑という状態です。ぼくも当時、「起業こそが唯一で最高の生き方だ」と信じようとしていました。しかも、自分にとってだけでなく、だれにとってもそうだろうと。

結婚も似たところがありますね。結婚こそ最高の生き方だと、新婚さんたちの中にはハイテンションで説く人もいます。「私たち幸せなの」というのろけはウェルカムですが、「結婚しない人たちは、なんて人生を損しているのか」と批判までされると困ってしまいます。同じように、旅熱にうなされている人もそう。旅に出ないなんてカッコ悪いとか。貧乏はありえない、株でお金を稼がないと、という人もいるし、賃貸より持ち家だ、と熱弁する人もいる。

何でもそうなんですけど、自分の幸せを静かに語るだけならいいんです。でもそれをマイクをもって絶叫しだしたり、人を批判するまでいくと、近所迷惑になってしまいます。大声を出している人を見たら、この人は何か変だなと距離をとったほうがいい。それは本人も気づいてないけど、不安に舵をのっとられた状態です。

本当に幸せな人は、自慢も批判もしません。満たされてるので、他人からの賞賛など求めないのです。自慢したくなるのは、どこかで不安があったり、自信がもてなかったりするからです。自慢をして、「いいなぁ」とうらやましがられて、「やっぱり俺の選択は間違ってない」と安心するのです。他人からの評価がないと、不安でしかたないのです。自分が本当に満たされてたら、力づくで他人を引っ張り込むようなことはしません。おすすめはするけど、「お口に合うかわからないけど、よかったらどうぞ」くらいな軽いもの。それ以上、踏み込むことはしないのです。

(約710字)

Photo: Cincono-

 


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。