【第156話】結婚に向かないかもしれない / 深井次郎エッセイ

「難易度を上げていこうかな」

「難易度を上げていこうかな」

 

 

緊張感は5ヶ月でなくなる
けど、負荷を上げれば取り戻せるかも

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5月を振り返って。この毎日更新マラソンも、元旦スタートから5ヶ月が過ぎました。計150本ほどになったわけですが、今月は、更新の遅れが目立ってしまいました。毎日更新のはずが、3日分を一気に更新し、なんとか追いつく。そのようなペースになってしまいました。

どうして遅れが目立ったのか。考えてみると、気のゆるみ。少し緊張感がなくなりだしたのかもしれません。走りはじめた5ヶ月前は、まだオーディナリーの読み物の本数がほぼゼロに近かったので、なんとか増やさないと、これではWEBマガジンとしてのていをなさないぞ。自分が率先して動かさないと。そんな切迫したものがありました。

これだけ遅れを見せといて説得力がないかもしれませんが、「毎日更新は意外と苦労なくできるな」と思えてきました。体が慣れてきたのです。実は、勢いづいて、5日先の分まで書いてしまう時もありました。貯金をつくったわけです。この貯金をつくると、つい攻撃の手をゆるめてしまいますね。まだ3日分あるんだ、えへへ、なんて言ってついさぼってしまうのです。さぼってしまうと、ペースが乱れます。そしてすぐに貯金はなくなり、逆に遅れてしまうことになるのです。3日くらい遅れても、「まあすぐに挽回できるさ」俺の手にかかればね。そういう余裕が、ますます遅れをもたらすのです。いずれにしても、緊張感がない。

現実の生活で借金をつくったことは一度もありません。しかし、借金をしてしまう人は、実は余裕がない人ではなく、余裕がある人なのではないでしょうか。自分がその気になればいつだって返せる。そういう自信のようなものがあるから、マイナスになっても焦らないのではないでしょうか。ふふふ、ハンディをあげてやろうじゃないか、くらいの気持ちです。そんなことを思いました。

では、どうしたらスタート時の緊張感を取り戻せるのでしょう。あの頃は、毎日、日付が変わる前に投稿ボタンを押していました。どんなに楽しい食事会があろうとも、早めに切り上げて帰り、更新ボタンを押す。あの頃は、そういうことをしていたわけです。「たまには遅くなってもいいじゃないの」そう食事仲間に引き止められても、「いや、あいつが待ってますんで」。新婚の夫が、新妻の待つ我が家のドアを開けるように、ぼくはいそいそと27インチiMacを立ち上げワードプレスの管理画面を開いていたのです。iMacのボーンという起動音が、新妻の「おかえりなさい」だったのです。それなのに今回「深井次郎は5ヶ月目で気がゆるむ」ということが実証されました。こういう男はきっと結婚に向いてませんので、いままで通り独身街道を突き進もうと思いますが、あれ、なんの話をしてたんでしたっけ?

そう、どうしたら予定通り更新できるか。スタート時の緊張感が取り戻せるか、という話でした。そこで考えたのが、「より負荷をかけたらどうか」ということです。負荷を2倍にすれば、「いやー、それはしんどい、無理でしょう」という緊張感が戻ってくるのではないか。全力を出さなければ乗りこえられない状況に自分を追い込むのです。

では、更新頻度を2倍にするか。いや、それはしんどすぎるかな。ぼくが今つまずいてるのは、書く量ではないのです。写真のチョイスと、レイアウトなどの編集作業に時間がかかっています。書くプロですから、書くことは苦ではないのです。書くだけ書いて、あと適当にアップよろしくーと言える状態にできれば、毎日2本更新も全然可能だと思う。まあ、すぐには無理だけど、いずれそういう体制を目指していこうかな。

初心にかえって考えてみます。そもそもこの毎日執筆マラソンを始めた理由は、トレーニングのためでした。毎日の素振りをするためです( 詳しくは:素振りの話 )。ならば、貯金などしてはいけません。「昨日たくさんストレッチをしたから、今日はしないでいい」というものではなりません。トレーニングは溜められないのです。毎日しないと意味がない。というわけで、貯金など忘れて、淡々と毎日書こうと再びふんどしをしめなおすのです。

(約1588字)

Photo: Dominik Kapusta


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。