【第071話】選球眼を疑ってみる

選球眼がなかったら、犬に聞いてみるのもいい

選球眼がなかったら、犬に聞いてみるのもいい

 

 

直感でハズした人は選球眼がない
次は自分で選ばない方がいいかもしれない

 

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良さそうと思って始めた仕事が、あんまりだった。これには大きく2つのケースがあります。自分が環境を好きになれなかったというケースと、そもそも環境がブラックだったというケース。選球眼はどのようにしたら養えるのでしょうか。まず、ハズレを引いてしまう人は、自分の見る目のなさを自覚することが大事です。ここでいうハズレというのは、その人にとってのハズレということであって、他の人にとってはアタリということもあります。ブラックだからすべていけないというわけではありません。

選球眼がないことを自覚する。ぼくだったら、まず方向音痴です。分かれ道にさしかかったとき、右か左か迷った場合、たいていハズします。勘で選ぶと必ず間違える。方向感覚のセンスがないのです。ないのがわかったら、自分の頭で考えないことが大事。センスのある人に、聞くのです。もしくはデータに頼る。地図を検索してしっかりと調べます。

仕事選びの選球眼がある人は、ブラック企業にいくことはありません。面接や会社訪問で行った雰囲気で、察知する。ここは危険なにおいがするぞ、と。そのにおいがわからない人もいる。すごくいいと思って入社したのに、あれ? という経験をした人は、自分の選球眼を冷静に疑った方がいいです。自分の勘を信じて次を選んでも、また同じようなにおいのクジを引きます。ブランクをおいて、その間にさまざまな経験をつんでからなら選球眼も変化している可能性もあります。しかし、間をおかず、という場合は、自分の勘では決めず、選球眼のある人にアドバイスをもらうのがいいと思います。

選球眼がないというのは、恥ずかしいことではありません。能力のあるなし、でもありません。だれでも、選球眼のある分野、ない分野があります。方向音痴、と言っても、別に恥ずかしくはありませんよね。飲食店をハズす人もいます。彼が、ここにしようかと直感で選んだところは、ことごとくおいしくない。逆に、門構えをチラッと見ただけで「ここはおいしそう」と当てる人もいます。飲食店に関してはぼくの選球眼は自信ありません。ものすごく高いのにまずい中華料理屋さんに入ってしまったことがあります。だからぼくは、なるべく自分で選ばないようにしています。

その代わり、本の選球眼はあります。背表紙のたたずまいを見ただけで自分に合うかどうかわかる。あと人。能力のあるなしではなく、善人かどうかのセンサーは今のところあると思っています。変なトラブルには巻き込まれないで、すんでいます。自信あるなんて、言ってる人は一番危ないので、注意をしないといけませんが。この人は何か面白いことやりそう、ともわかります。ああ、やっぱりやったか、というケースが多くある。

というように、自分の選球眼のあるなしを、過去の打率から冷静に算出するのです。ぼくの方向音痴ぶりはすごいので、直感でこっちと思った方は9割まちがう。なので、自分以外に頼るものがない時は、直感でこっちと思ったら、その逆にいくようにしています。仕事の選球眼がない人も、これと思ったものほど引かないようにするといいのです。それを考えると、転職のエージェントは必要な仕事だと思う。ただし、本当に求職者側に立ち、長い人生に寄り添って相談にのれるエージェントじゃないといけません。それはなかなか難しいと思いますが、将来そういう人がいっぱい出てくるといいですね。

 

(約1430字)

 Photo: garryknight

 


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。