【第070話】旅人たちの終着駅

この辺に降りてみた

赤い糸か、青い鳥か

 

 

ウロウロする人
一直線な人
それぞれの生き方

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「自分はいろいろ試すタイプだな」そう気づいた人は、とことん数を回ってみるのが大切です。そうやって消去法で、つぶしていく。すると、どこにいっても完璧な場所はないというのが大前提で、もう自分にはここしかないという終着駅にたどり着く。ここしかないという覚悟がもてる環境に、ある時期に必ず行き着くことができます。もしかしたら、自分の居場所は自分でつくるしかないという結論かもしれませんが。とにかく、いろいろ試すタイプの人なのに、中途半端にウロウロをやめるというのが一番避けた方がいいことだと思います。飽きっぽい人は、いろいろ試しているからこそ、最終的に落ち着いたらすごい集中力を見せるものです。そこまでのめりこむことができるのは、散々試してどこにもユートピアがないことがわかったからです。

一社でしか働いたことのない人は、今いる環境が最高という覚悟が持てない人もいます。もしかしたら他に自分に合った運命の仕事があるかもしれないという思いで過ごします。でも、100%楽しくてしょうがない、毎日がうきうきワクワクという仕事はありません。9割つらいけど、でも最後に納得いくものができた時は、その疲れが全部チャラになるくらい達成感がある。その一瞬のためにやっている。9割つらいはずなのに、それが好きだと、みんな胸を張って言っているのです。

ぼくはと言えば、仕事選びの選球眼はあるほうです。最初にこれと決めた仕事は、まっすぐ続く。あまりウロウロ旅をするタイプではありません。ほかにユートピアがあるとも思わない。ほかの仕事がうらやましいとも思わない。そういうタイプもいます。でも適当に「遊ぶ金欲しさ」で試した学生時代のバイトでは、ハズレもありました。道路に立ってる警備員は暇すぎて飽きちゃったし、頭をつかわない規則正しく管理される工場労働もダメでした。尊敬できない上司に、上司というだけで偉そうに命令されるのも吐き気がする。体が拒否するのだからしょうがない。自分にとって最低な環境を経験することで、好き嫌いがはっきりするのです。その正反対な環境を選ぶようにしてからハズレがなくなりました。

ウロウロする人と一直線な人。どちらがいい悪いではありません。自分はどちらで、どういう人間かと知ることが大事です。そして、どこかの時点で覚悟を決めるのです。自分はこれでやっていくと。自分はこれしかできない、でもいいと思います。恋から愛に変わる瞬間でしょうか。ぼくも、サラリーマンはできないという消去法で、独立してやっています。一瞬、サラリーマンはいいなぁ、と思うこともあります。でも自分にはできないので、しかたありません。確定申告も面倒だけどやらないといけない。溜まってしまった領収書を、チマチマと整理するのです。

ウロウロするタイプの人もいる。なので、一度会社を辞めても戻って来れる制度はあるといいです。一回外に出たからこそ良さがわかるということはありますからね。

 

(約1251字)

 Photo: Nukamari


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。