【第019話】連載14日目の心境

注意:飲めません。飲んでるふり

深井は飲めません。いろんな国のビールを並べているところ。編集部メンバーと原宿にて

夜中に酔っぱらって書いた
ラブレターのような

いやー、新年エッセイマラソン、きょうで14日目になりました。元旦スタートから2週間。ちょっと一息入れて、心境でもつらつらお話しようかと思います。

毎日連載というのは、初めての経験ですが、思ったほど大変ではないです。(うそ、強がっちゃって)

でも、続けるというのは大変です。縛られるのが苦手なので、そういう重荷を脱ぎたくて仕方ない感じ。あとは時間がない。書くという作業は、時間がかかる。日付が変わるギリギリにアップされるのは、本当にギリギリまで書いてるからです。このマラソンは書き溜めをするやり方じゃないから、ストック、貯金がないのです。その日暮らし。コツコツ継続が一番苦手。

何が大変かなというと、一番時間がかかるのは、書いてる時間よりも「今日はなに書こうかな」と考えている時間です。特に、「インド旅篇」は、当時の状況を思い出して、そこに脳内トリップをしないと書けません。ちょっとしたメモはつけてましたので、それと写真と動画を見返しながら、状況を思い出します。

インドにタイムトリップする時間がね、これがすぐに2時間とか3時間とかかかる。インド篇を書き始めると、それを数日続けた方がタイムトリップする時間が短くなるから、連続して書いてしまうんだけど、それだとORDINARYの記事がインド色に染まってきて、写真も全体的に茶色な感じになってきてしまうので、バランスを見ながら、というところ。

連載している人たちがよく言う「ネタがない」ということは、ぼくの場合、ありません。それは10年モノ書きをやってきて、その過程で開発されたいくらでも生産できるワークフローがあるから(その辺のやり方は、自由大学の講義にて)なんですが、毎日、限られた時間内で書こうと思うと、重い話を後回しにしてしまいますね。せいぜい2000字以内で、まとまるような軽いトピックになってします。インド旅篇でも、「人生の目的」とか「豊かさについて」とか書きたいことがいろいろありますが、大きなテーマはじっくり取り組まないと、と思ってしまって、余裕ができたら書こうと後回しにしてしまいます。そして結局、一日でさくっと書ける軽い話になってしまいます。
あとは、伝えたいことはたくさんあるけど、どれから書こうかなと考える時間がかかる。書き手がすでにわかってることを伝えるのって、簡単だけど、飽きるんです。書き手自身にとって新しい発見がないから。

反対に、まだ自分なりに結論が出ていないことを、あーでもないこーでもないと考えをこねながら書くのは面白い。けれど、時間がかかるし、重い。小説を書く時に、書いてる本人自体が「この先、どう展開するんだろう」と知らない感じが面白い。自分が書き手なんだけど、読者でもあるという。

知ってしまっていることを、ただ伝えるためだけに書くというのは、モチベーションがなかなか沸かない。

ここだけの話ですが、本当はぼく、書くことが好きかと言われたら、好きじゃないんです。めんどくさい。できればやりたくないと、いつも思ってます。これって実は問題発言でして、だってぼくは「好きなことをやって生きよう」というメッセージを掲げていますから。大学などでもそう教えているので、「ウソ言ってたの?」ということになってしまう。

ぼくが本当に好きなのは、「考えを発見したとき」なんです。あーそうだったのか、「ユリイカ!」という瞬間。そして、それを大切な人たちに共有できた瞬間。この2つが好きなんです。だからこの2つの間にある「書いている作業」は、できれば省きたいことなんです。

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ビールにもいろいろあるのね。苦くて苦手だ。アルコール自体が苦手。飲まなくても酔っぱらってますので必要ない。これ以上ゆるんだら社会生活が営めなくなる

いつか、人間同士がテレパシーで思考やイメージを伝えられる時代がくると思いますが、早くくればいいのにと思っています。でも、その時を待っていたら何も伝えずに死んでしまうので、書くことは避けられないかな、と諦めて精進します。好きなことをするために、書かざるをえないということです。書くという行為は、好き、よりは、得意というものです。写真も動画も書くことも、それぞれ適材適所があるから、それらを使いこなして伝えていきたい。

毎日、そのとき書いたものをすぐにWEBで公開するという面白さもあると思う。鮮度が高い文章というものがあって、それは書き手が酔っぱらってること。イメージとしては、夜中に書いたラブレターのような。くさいことや恥ずかしいことも書いちゃったり、誤字脱字も関係ない。そういう酔っぱらった感じ、検閲のない感じがWEBの場合、面白いかなと思っています。本当にまずかったら、あとで消せるし。

これが紙媒体だとそうはいかない。最低3人の目でチェックがされますので、検閲機能が働きます。紙にする時には、推敲を重ねますので、クオリティは上がります。だから、本が好きなんですけど、WEBにはWEBの強みである鮮度、ということを意識していこうと思っています。

最後に、質問があったので答えますと、エッセイの末尾の文字数カウントに深い意味はありません。自分が把握するためにつけています。今までぼくは文字数制限のある雑誌で書くよりも、自由度の高い書籍で書いてきたので、文字数の体感があまりないのです。依頼も「深井さんのやりたいように、好きなだけ」というものばかりですので、1500字ジャストで、という新聞のようなシビアな原稿はほとんどやってきてません。たぶん、それは向かない。やればできるけど。

でも、これからORDINARYで紙媒体をつくっていく上で、収まりのいい文字数の感覚もつかんでおかねばなぁと考えて、つけています。

毎日書くことでオーディナリーに来てくれる人も少しずつ増えてきているようです。最近ですと、たなか鮎子さんの記事が評判よくて嬉しいです。

今日も、オーディナリーに立ちよっていただき、ありがとうございます。
また、明日もお会いしましょう。

 

(約2250文字)


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。