【ハナサクトキ】 弥生 チューリップ

3月の花 チューリップ

3月の花 チューリップ

【連載】菊池裕子の「花が咲く時」 Vol.6 チューリップ

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生命力溢れ
しなやかなラインで踊るバレリーナ

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3月はわたしにとって始まりの月、です。この時期に多いお別れも、その全てが新しい場所に向かうためのそれぞれの始まりだとしたら…やっぱり何かが始まる月、なのだと思います。空気が日に日に暖かくなって行くことすら、これから起こる何かを想像させるようでどこかワクワクしてしまう…そんな期待感に溢れる、1年の中でも特に好きな月です。

そんな季節を彩る代表的なお花として真っ先に浮かぶのは、色とりどりのチューリップです。花屋の3月は、1年の中でも一番花束のご依頼が多い月です。一輪巻きから大きな花束まで。

学生時代、卒業する部活の先輩方への一輪巻きを、毎年あるお花屋さんへお願いしていました。お花屋さんからは、この値段ならバラは無理、チューリップなら何とか大丈夫だよ、と言われて、無理にお願いをして用意してもらっていたことを思い出します。

当時はまさか自分が依頼される側になるなんて想像もしていませんでしたが…その気持ちがとても分かるので、一輪でも喜んでもらえるようなものを…という想いを込めながら、お花を選んでいます。

flower03

チューリップは切り花でも茎が毎日伸びて行きます。ちょうど良い並びで花束にしたのに、次の日にはチューリップだけ頭が飛び出ていたりします。さらに…しなやかなラインが素敵でアレンジしたのに、いつの間にか元気に真っ直ぐ上を向いてしまうこともあります。

花びらは朝の光で開いて、夜の暗さを感じて閉じる、を繰り返します。なんて生命力があって、瑞々しさに素直なんだろうと、思わず微笑ましくなってしまうほど、です。踊るバレリーナのような茎、花の横顔のまぁるいフォルム、それを包む緑の葉っぱはキャベツの葉を落とす時のような生き生きした音を立てます。そんな生命力溢れるチューリップを束ねるたびに、始まりの春にこそ相応しい花なんだなぁと改めて、思うのです。

小さな花屋はそんな風に、今年もこの花たちと春を迎えています。

オーディナリー ORDINARY

チューリップとの付き合い方

1. 球根花は水分を多く含んでいるので、花瓶の水は1/3程度でOK。
2. 葉は1〜2枚残したまま飾ると生き生き見える。
3. アレンジするときは伸びしろを考慮して、気持ち短めに配置する。


菊池裕子

菊池裕子

Malmö (マルメ)主宰 /「いつも」の花と「特別」な花をあつかう花屋。「いつも」の花は、日々の暮らしがちょっぴり楽しくなるような。「特別」な花は、とびきりの日がもっと輝くような。それぞれにこだわった花を、ナチュラルなテイストで提案している。駒沢にあるCOPAINDA gallery(コパンダギャラリー)内の小さな花屋。