【ハナサクトキ】 睦月 水仙

2月の花 水仙

2月の花 水仙

雪の中で春の訪れを告げる花

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花屋では毎年、忙しいクリスマスシーズンの後には慌ただしく年末まで続くお正月の準備が待っています。そんな中大晦日を迎え、晴れて新年が明けた頃にやって来るのが、この水仙の香りです。年の初め、水仙の清々しい香りに包まれるたび、背筋が伸び気持ちが引き締まる思いがしています。

今年も一年、健やかに楽しく花の仕事が出来ますように。花を通じた仕事が誰かの喜びの種になりますように。その種が芽吹いて花が咲き実になって、その輪が広がって行きますように。そんな花屋を始めた頃からの願いをいつも新たにさせてくれます。

水仙はまだ寒い冬の時期に最初に出始める春の花です。水仙とは漢名で、その花姿と芳香を水の仙人に例えて名付けられました。また別名を雪中花といい、雪の中で春の訪れを告げる花という意味合いもあります。英名ではNarcissus(ナルキッソス)と呼ばれ、泉に映った自分の姿に恋をし見つめ続けるうちに花の姿に変わってしまったというギリシャ神話に登場する美少年の名前で、ナルシストという言葉の語源にもなっています。

そんな数々の名前を持つ水仙。昔の人々には特別なお花として映っていたのかもしれません。私にとっては、小さい頃に花壇や道端に当たり前に咲いているくらい馴染みがあり、誰もが知っているどちらかというと少し懐かしく野暮ったい印象のお花でしたが、今では八重咲きのかわいらしい品種(写真左)が出ていたり、小さくて儚げな日本水仙(写真右)の存在を知ってからは、年末から春先までお店に並べる事の多いお花になりました。

そして何と言っても爽やかな良い香りを纏っているということ。放たれた香りは天然のルームフレグランスと呼べるほどです。その透明感のある香りには鎮静効果があるそうで、水仙の香りが広がると不思議と落ち着く感じがしていたのは、実はそのせいだったようです。

茎や葉が真っ直ぐに伸びる瑞々しい水仙。その姿や香りは、私にとって初心に帰らせてくれる存在でもあるのです。

20140116

水仙との付き合い方
1. 茎は真っ直ぐ水平に切る。(付いている葉は捨てずに一緒にあしらうと飾った時に自然で綺麗に見える。)
2. 水分を多く含んでいるので、花瓶の水は少なめで良い。
3. 暖かい場所では開きが早いので、少し寒いくらいの場所(玄関など)に飾っておくとより長く楽しめる。

 


菊池裕子

菊池裕子

Malmö (マルメ)主宰 /「いつも」の花と「特別」な花をあつかう花屋。「いつも」の花は、日々の暮らしがちょっぴり楽しくなるような。「特別」な花は、とびきりの日がもっと輝くような。それぞれにこだわった花を、ナチュラルなテイストで提案している。駒沢にあるCOPAINDA gallery(コパンダギャラリー)内の小さな花屋。