出店という立場からつい「そこでは売れるのか・売れないのか」という目線を中心にマルシェを見てしまうことがあるのですが、結局のところ、賑わいを生んで多くの人に愛されるマルシェを作っているのは「人」。つまり運営をしている方たち。その姿勢や雰囲気はマル
第42話 マルシェが増えた今だから考える、どこに出店し、誰に見ていただくのか
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こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。
このところ、出店先で出会うお客様から立て続けに「連載読んでます!」とお声がけいただくことがあり、「更新出来てない……ドキッ」と後ろめたく、同時にとてもありがたい気持ちです。おかげさまで横須賀での新生活はおおむね順調で、イベント出店も少しずつ再開。新しい生活リズムもつかめてきた気がします。がんばりますので、どうぞこれからも読んでください!
さて、拠点が西小山から横須賀に変わったこともあり、神奈川方面の新たなマルシェにも何度か初出店の機会をいただきました。私たちにとって、新たな場所で新たなお客様に会えること、いつもの場所でなじみのお客様に会えること、どちらも喜びや発見がある幸せなひとときです。
今回はいくつかの「初参加」を体験したことで改めて感じた「出店先の選び方」について触れてみたいと思います。
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身近な買い物の場になったことで
マルシェ戦国時代が到来!?
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『ノマディックラフト』が活動を始めてから10年近くが経ちますが、昔に比べ「マルシェ」や「手作り市」などのマーケットが驚くほど増えたなあ、と感じます。
大量生産のファストファッションや、100円ショップが生活のすみずみまで浸透し、どこにいてもワンクリックで物が買えるほど通販も便利になったのは、ここ20年ほどの間でしょうか。いわゆる「コスパのいい」買い物をするには本当にいい時代になったと思います。
一方で決して安くも、コスパもよくないけれど、「生産者の顔が見えるもの」「人の手の温もりを感じるもの」を欲する人が増えたのは、そういう時代の反動なのかもしれません。その表れのひとつが「マルシェの増加」であることでしょうし、喜ばしいことだと感じています。(読みづらくなるので、この後は「手作り市」「マーケット」などもこの後すべてひとくくりに「マルシェ」と表現させていただきますね!)
ただ、幸せな悩みというか、これだけいろんなマルシェができると「どこに出るのがよいのか……」と考える機会が増えてきたのも事実。実際、イベントでお知り合いになった出店者さんたちと話していても「普段はどこに出店してますか?」「あそこのマルシェの様子ってどうですか?」と情報交換の機会が増えている気がします。それだけ頭を悩ませている人が多いのかもしれません。
以前は今よりシンプルでした。開催されるマルシェの数が限られていたため「自然派コスメを販売する人はここ」「木工作家さんならあそこでは?」など、出店場所も決めやすかったんです。もちろんそのぶん、市場規模は今ほど大きくなく、マルシェというものはもっと「知る人ぞ知る」的な立ち位置だったような。
しかし、あちこちで頻繁に開催されるようになったことで、マルシェはより身近な買い物の場へとスイッチしました。以前は「木工作家さんならここ」だったのが、同じ週末に、手仕事をフィーチャーしたマルシェが3つ、4つ、となると、出店者がどこに出ようか悩む気持ちもよく理解できます。
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人が多ければ売れる!
……というものでもない難しさ
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ここ数年、様々なマルシェに出続けましたが、どこに出店するのか考えるとき、私たちはこんな要素を検討しています。まず条件面で言えば、こんな事柄。
■日時・場所について
・開催シーズン(気候など)
・定期/不定期の別
・会場(屋外・室内の別、雰囲気も含む)
・周辺環境(人通り、アクセス)
・ブースの広さ
・自分たちのスケジュール
天候による影響があるのか(雨や猛暑、砂埃や泥など)、テントの要・不要(準備や雰囲気が変わるため)などは早いうちにチェックします。あとは広さの面で、小さなテーブルひとつしか置けないのか、逆に広すぎてスカスカにならないかを確認します。理想として、相性の良いマルシェには継続的に出店したいので、定期・不定期の別も忘れずに調べます。
周辺環境については、人通りが多くアクセスが良ければいい、という訳ではないのが難しいところ。実際、過去に出店経験のあるマルシェの中には、たくさん人が来るけれど飲食ブースだけ賑わって物販は厳しいところもあれば、最寄り駅もない山の中なのに多くのお客様が買い物をしに来てくださる……というケースも。
この後に触れますが「どんな人が来るのか」という点の方が、実際のアクセスよりも重要、というのが現在の実感です。
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運営スタッフの人たちが
マルシェのムードを作っている
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基本的なことを先に述べましたが、より重要なのはこちら。それは、マルシェのコンセプトの確認です。
■コンセプト
・マルシェの目的
・運営団体/主催
・扱う品目
これだけ多くのマルシェが開かれるようになった今、貴重な週末に「面白そう」と感じるマルシェがいくつもあれば、どこに行こうかお客様が迷うのは当然。それを「集客が分散する」とネガティブに捉えることもできますが、それでも来てくださっているお客様は「そのマルシェが好き」「提案するコンセプトに共感している」モチベーションの高い方である、とも捉えられます。
先ほどお話ししたように「たくさん人が来そうな場所」に出店しても、反応がイマイチだったりすることがあるのはそこかな? と。マルシェのコンセプトと、自分たちの提案する物が合えば合うほど、私たちもいいお客様と出会え、お客様にもご満足いただけ、マルシェも盛り上がる、という良い循環につながるように感じています。
■ムード
・運営の方たちの様子
・過去のマルシェの様子が分かる写真
・これまでの出店者
・マルシェの評判/クチコミ
私たちが、最終的に出店の決め手にするのはこれかもしれません。
出店、という立場から、私たちはつい「そこでは売れるのか・売れないのか」という目線を中心にマルシェを見てしまうことがあるのですが、結局のところ、賑わいを生んで多くの人に愛されるマルシェを作っているのは「人」。つまり運営をしている方たちです。そして、その姿勢や雰囲気は、マルシェのムードとちゃんとリンクしている気がします。
場所を用意して、当日のために打ち合わせをして、用具を手配して、出店者の管理をして、来場者の安全に心を配り、予期せぬトラブルに対応し、最後は片付けまで。運営は本当に大変だと思いますが、思いを持って熱心に取り組んでいる運営者の方たちはイキイキしていますし、笑顔も魅力的。規模の大小を問わず、そういうマルシェには温かい雰囲気があります。
不思議なもので、お客様もそういう波長に合った方がやって来る、というか、お客様に笑顔で声をかける運営さんがいるマルシェには、会話を楽しむ雰囲気の人たちが来ますし、シュッとおしゃれで必要以上のコミュニケーションをとらない運営さんがいる所には、やはりそういうスタイリッシュで孤高の雰囲気を好むお客様が多くなります。
どちらがいい、悪いという話ではなく、このあたりは自分たちの求めるスタンスとの相性によるところも大きいのではないでしょうか。
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出店したことで元気になれる
そんなマルシェが好き!
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ちなみに『ノマディックラフト』的に相性がいいのは、やはり会話を楽しんでくださるお客様がくるところ。というのも、これまでお買い求めいただいた方たちは、無言で商品をパッと選んで買っていく……というケースはほとんどなく、多くが商品説明を聞いてくださり、時には質問をしてくださるなか、「じゃあこれにするわ」と選ぶ時間を楽しんでいるように見えるからです。
また、「刺繍や布が好き」な方が多そうであるのも大切です。というのも、私たちの扱う物は人によって「ああ、アジア雑貨ね」で終わってしまうこともあります。目を見張る刺繍の細さや、個性的な柄織りの面白さに足を止めてくださるのは、やはり刺繍や布が好き、クラフトに関心がある、そういう方たちであるようです。
■最後に……
・出店料
明らかに「払えないよ!」という金額だったら悩まないのですが、マルシェの場合は3000円~1万円程度で出店できるケースが多いように思います(小さなマルシェだともっと安いこともあります)。ご存じのとおり、料金のなかに含まれているのは場所代だけではありません。マルシェが培ってきたイメージや信用、集客力、運営の方たちの人件費。さらには出店したことで知っていただく機会が増えたり、自分たちのイメージも良くなったりするかもしれません。それらの要素と、出店することでいくらくらい売れるのかを考え、それが高いか安いかについて検討すればよいのかな、と思います。
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途中で「相性の良いマルシェには継続的に出店したい」と書きましたが、それには制作の予定が立てやすい、事前に雰囲気が掴めると販売予測もしやすい、固定客を作りやすい、などの商売的な理由もいろいろありますが、「楽しく、気持ちよく出店できる」というシンプルな要素が、実は私たちにとって結構大切なことだったりもします。
というのも、物を作って販売していると、楽しいことばかりじゃありません。もの作りに苦しんだり、売れない日もあったり、自分たちの商品の魅力が足りていないのでは、と悩んだり。(もちろん、夫婦ゲンカしたり!)。でもそういうとき、素敵な人たちのいるムードのいいマルシェに行くと、素直にやる気が湧いてくるのは、私たちが単純なのかもしれないですが、本当にそうなのです。「一緒に盛りあげたい!」「人を呼んで、この素敵な空間を知ってほしい!」と思いますし、「がんばるぞ!」と明日への活力も生まれてきます。
販売の場を選ぶ、というとビジネスライクな響きに聞こえますが、その本質はお金を稼ぐ、ということも含めて「生き生きと働ける場を見つける」ということなのかな、と思っています!
次回も、ちいさなお店についてお届けしますね。どうぞお楽しみに!
(月1回 第4土曜日更新の予定でがんばります)
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メディア掲載
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ノマディックラフトの店主が、雑誌に取材していただきました!
おしゃれなインテリア事例がたくさん載っているリノベーション専門誌『relife+(リライフプラス)』Vol.32号。その中にある、タレントのちはるさんが様々な作家を紹介する連載『ちはるの手』に、ノマディックラフトが登場してます。
ノマディックラフトのイベント出店情報
渋谷蚤の市 Shibuya Flea Market
2019年6月9日(日) 11:00~16:00 ※雨天中止
@東京都渋谷区南平台16-17 渋谷ガーデンタワー(ベルサール渋谷ガーデン)屋外広場
毎月第2日曜日(9月を除く)に開催。古より受け継がれてきた伝統や文化をテーマに、アンティーク、古道具、クラフト、フードまで、こだわりのショップや作家が集まるマーケットです。 https://market.ka-ka-ya.com/pages/2732398/page_201903291903
旅のものたち
2019年7月4日(木)~7月18日(木) 11:00~17:00 ※火曜休
@ぎゃらりーぜん 神奈川県秦野市立野台1-2-5 十全堂薬局2階
絵画・写真・工芸・民芸・雑貨・洋菓子など「旅」をテーマに集まった作家、バイヤー、コレクター、職人たちによる真夏のトランクショーです。 www.hadanogalleryzen.com
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連載バックナンバー
第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編>(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編>(2016.1.30)
第17話 始まった… 年に一度の確定申告(2016.2.13)
第18話 手仕事は同じじゃないから美しい~『ORDINARY』とコラボグッズを作ったこと(2016.3.11)
第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
第20話 生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>(2016.6.18)
第21話 夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。(2016.7.20)
第22話 おしゃれに見せるって難しい! イベントのディスプレイで四苦八苦。(2016.8.26).
第23話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪前編≫(2016.8.26)
第24話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪後編≫(2016.11.26)
第25話 ちいさなお店がイベントに出た1年を振りかえる(2016.12.24)
第26話 ちいさなお店の海外買い付け① 買い付け方法と情報集め(2017.01.30)
第27話 ちいさなお店の海外買い付け②航空券の準備 (2017.02.28)
第28話 ちいさなお店の海外買い付け③スケジュール決め&宿探しのパズル (2017.03.31)
第29話 ちいさなお店の海外買い付け④アイテム探しと値段交渉 (2017.04.30)
第30話 ちいさなお店の海外買い付け⑤価格はどう設定するか(2017.06.05)
第31話 寝台特急は楽しい出会いの宝庫(2017.06.25) .
第32話 オリジナル商品ってどう作るの?(2017.07.29)
第33話 成長し続けていくために考えること(2017.09.30)
第34話 ちいさなお店の意見の違い、どう乗越える?(2017.11.04) .
第35話 安定している時期だからこそ、未来に種をまくこと(2018.1.09)
第36話 イベント成功のカギは、出店前後の「イメージトレーニング」にあり?(2018.1.27)
第37話 迷ったら、手を動かすこと(2018.4.3)
第38話 押しつけ? それとも説明不足? ちょうどいい「接客」の距離感とは(2018.5.3)
第39話 ちいさなお店の安全を守るために、考えておきたいこと(2018.6.10)
第40話 ちいさなお店が、横須賀に移転したこと(2019.1.20)
第41話 ちいさなお店をアトリエにするまえに、床のDIYに挑戦したこと(2019.3.05)
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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話
【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!
【関連サイト】 ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/ ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft 木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/ |