ある8月の朝、深井次郎は、「自分の本」メンバー安房さんのお宅を訪ねました。
そこは千葉の住宅地にある鎮守の森に囲まれた一軒家。気になってしょうがなかった安房さんの「冷蔵庫なし、クーラーなし、発酵ライフ」がどういう暮らしなのか見せていただきつつ、発酵食品と野菜中心のお昼をごちそうになったり・・・発酵について、地球にも人にもやさしいライフスタイルについてのおしゃべりを、のんびり2回にわけてお届けします。
深井:首都圏なのに、緑が多くて、森の中にあるみたいですね。
安房:同条件でマンションもあって迷ったんだけど、庭がある方がいいと思って、一軒家にしたんです。もうここの暮らしも13年くらいになります。
深井:庭が広いですね。
安房:ええ、とうもろこしとかの野菜を少し植えていますけれど、前からあった植木とか雑草も一緒になっていて、手を入れていないからジャングル状態。セージとかミントなんかのハーブもいくつか植えていて、ブルーベリー、山桑の木、木いちごもありますよ。
深井:(庭先に冷蔵庫を発見!)あ、冷蔵庫がある。
安房:捨てられないから、今は、物入れになっています。
深井:とってあったんだ。これが壊れて、冷蔵庫なし生活が始まったんでしたよね?
安房:なんとなく、そうね。やってみると、冷蔵庫なくても、大変じゃないんですよ。壊れる前は、ないと暮らせないと思い込んでいたけれど。発酵食品はもちろんだけど、真夏でも野菜や卵でも常温で大丈夫だし、肉や魚も使う分だけ買いに行けばいいし。昔と違って今はコンビニもあるから。必要なときはコンビニに氷を買いに行きます。たまにはアイスも食べたいし。
深井:安房さんアイス食べるんですね!ちょっと安心しました。コンビニの冷蔵庫があれば家のはいらないっていうのは、面白いなあ。
(・・・と談笑しながらお家の中へ移動)
お邪魔します。(棚には、瓶詰めがずらりと・・・)
これが発酵のビンですか!たくさん並んでいて、研究室みたいだ。発酵ラボだ、発酵ラボ!
安房:ふふ・・・今、発酵に夢中なんです。お味噌とか、お醤油とか、発酵ジュース。生ごみも発酵させているんですよ。匂いかいでみて、ほら、生ごみ、臭わないでしょ?
深井:ゴミも発酵させてるんですか?(ゴミ箱のフタをあけて匂いを確認)ほんとだ!ゴミの匂いじゃないですね。
安房:お魚なんて入れても、2~3日で生臭さがなくなって発酵の匂いになるんですよ。ゴミは発酵したら、庭に埋めます。庭の土は、以前は除草剤を使っていたらしくて硬かったんですが、発酵ゴミを肥料がわりに入れていったら、柔らかくなってきました。
深井:よく見ると、他にも同じバケツがありますね。
安房:ゴミだけではなくて、お味噌にも使っている発酵用バケツなんです。抗酸化ビニールっていう特殊な樹脂でできていて、なんとなくですが、発酵がゆっくりになる感じなんです。発酵食品の熟成には適しているみたい、インターネットで買って使っています。でも、お味噌なんかは、木桶のほうが味がいいんですけどね、理由はわからないの。気のせい?と思うほどの微妙な違いなんだけれど、違うのね。発酵って不思議ですね。菌とかバクテリアには気持ちがわかるのかしら?と思うこともあります。
深井:え? 菌と心が通じるんですか?
安房:発酵食品ってね、作る人によって、同じ状態で同じものを同時に作っても味違うんです。その人の在住菌のせいなのか、どうなのか、手の温度とかもあるんでしょうけど、不思議なことがいっぱいあるんですよ。
深井:へえ、不思議ですねえ・・・安房さんの追求するテーマは、やはり発酵ですか?
安房:発酵もひとつのテーマですけれど、それだけだとマニアックになってしまうので、日常の中で楽しめる食や、昔の人が使ってきた知恵を活かした生活を楽しんでいきたいと思っています。そういうことを入り口に、前よりも自然のことに目が向いていったというか。菌って日和見菌と悪玉菌とか善玉菌とかいるでしょ?でも日和見菌が一番多かったり、バランスで成立していて、人間の社会と似てたりね、自然に教えられることって多いんです。他にも食と心と体のつながりとか、古武術とかにも興味があって、そういう昔の知恵を勉強していますが、なかなかすごいんですよ。生きていく上で役に立つ、あんまり知られていない昔からの技を、これからの人に伝えるつなぎ役になりたいなって思います。
深井:発酵や食を入り口に、昔の人が使っていた生きる知恵を渡して行くようなことですね。生活全般から、自然への関心とか、環境とか、いろいろ広がりがありますね。
〈 プロフィール 〉 |
|