ゆっくりでも
蓄積される仕事をしていると
未来が楽しみになる
——–
ゆっくりでも、すぐにはお金にならなくても。蓄積される仕事をコツコツやっている人たちがいます。そんな人は年を取るのが楽しみになります。書いたり話したり教えたり、という仕事も、年を取るのが楽しみになる仕事のひとつです。一生続けることもできます。
本は書いたら残ります。出した直後はたとえ売れなくても、将来ヒットが出れば、昔の著作も再び注目してもらえます。絶版になった本も、作家が望めば版権をひきとって刷りなおすことができます。書いたものは一文字も無駄にならないのです。こうしたWEBでの連載も蓄積されます。たくさん書くほど、検索流入などで読み手が増えていくし、一度書いてしまえば、他の媒体でも再利用できます。
反対に、経験が蓄積されない仕事もあります。総菜のお寿司にタンポポをのせるような単純作業は、10年やっても、20年やってもスキルは変わりません。他には、その社内でしか通用しない業務。たとえば、ある銀行には独自システムに数字を入力する仕事がありますが、それは違う銀行に転職したら、全然違うシステムなので、入力方法を1から覚え直さないとなりません。「前職の10年間に覚えたことが、他では何の役にも立たなかった…」と嘆いている先輩たちもいます。社内政治に明け暮れたサラリーマンもそう。社内事情に精通し、上司からのポイント稼ぎだけに力を注いでも、会社を変わったら、何も残りません。
仲間づくりも同じです。蓄積される関係を築いていきたいです。「会社が変わったらすぐに赤の他人になってしまうような関係」に労力を費やすのは、むなしくなります。会社の看板でつきあっていた人は、相手がそのブランド企業を辞めた途端、「メリットがない。もう関係ない」と言って離れていきます。それと反対に、個人的に興味や志が同じ同士でできた仲間は、相手の所属が変わっても、変わらず付き合いはつづきます。年を取るごとに増えていくし、時間とともに深くもなっていきます。
どうも蓄積されないことを、やる気が起きません。30代になり、より人生は短いと意識するようになりました。目指す社会を実現するためには、時間を切り売りしてる暇はありません。未来を楽しみに思えるか。これがぼくにとってお金よりなにより大事です。蓄積される楽しみがあるから、あした以降も生き続けようと思えるのです。
(約945字)
Photo: piotr