【第001話】After The Rain. -雨後の筍のように-

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なぜ、あえていま出版社をつくるのか

かつて数少ないマスメディアしかなかった時代がありました。みなが同じ方を向きました。悲しい戦争がありました。地球を痛めつけるものをつくってしまいました。多数派の考えること、試験のできるエリートの考えることがいつも正しいとは限りません。盲目的に大きなものに寄りかかるのではなく、立ち止まって、自分の頭をまわし、心と感性をひらき、美意識をもつことが必要です。はたらくこと、生きること、家族や仲間と暮らすこと、地球環境や平和を意識すること。これらは本来、分けることができないものです。すべてはつながり、循環しているのです。

ある日、平和をテーマにした絵本が世界を変えていく夢を見ました。清々しく目覚めた朝でした。絵本が言葉の壁、思想の壁、世代の壁を越えたのです。これから未来を担う子どもたちの心をどう育てるか。子どもたちにきれいな水と森のある地球を残せるか。その決断はぼくら大人、ひとりひとりの行動にかかっています。だから話し合おう。意見が違うのは、あたりまえです。向かい合って対立するのではなく、ベンチの隣に座って、同じ未来のほうを見ながら話そう。

いま若い世代を中心に、小さなメディアが次々に立ち上がっています。メディアの語源は、メディウム-medium-というラテン語です。ミディアム、中間、媒介するもの、つなぐもの。かつてのマスメディアに見られるような一方的な発信ではなく、発信と受信の中間に位置するそれを双方向でにじませる、行き来する、対話するのが本来のあるべきメディアなのです。

話すことをはじめよう。間違えてもいい。間違えたら謝って訂正すればいい。大人も子どもも話し合う場をつくりたい。多様な考え方があっていい。生き方があっていい。だからメディアを立ち上げました。小さなメディアが雨後の筍のように生まれることが、世の中をほんの少し生きやすくするきっかけになると信じています。ぼくたちもやりますが、あなたも一緒にやりましょう。ひとりひとりが表現者である時代になりました。よりかからず、その踏ん張った足に志が宿るよう。

 

 


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。