【第100話】値段が高いだけのことはあるのか

「カサカサが潤った」

「カサカサが潤ったね」

高いものが必ずしも効くわけではない
でも、今回は効いてしまったよ

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どうでもいい話ですが、唇がカサカサでした。この冬ずっとです。もう半年も、なぜか上の唇だけすごくガサガサなのです。白くなったり、皮がむけたりして痛い。もちろんリップクリームは塗ってみてたんですが、いっこうによくなりませんでした。でも昨日の夜、そのリップが一本なくなったので、買いにいった。買い物は、つい今までと同じ銘柄を選んでしまいそうになるものです。でも、待てよ。今までので良くならないわけだから、違うのも試してみようか。リップクリームを何で選ぶか。まず大前提としてスーッとしないで匂いがしないもの。スーッとするあれは苦手です。そして最後は、デザインの好みです。

薬局のリップコーナーの値段を見わたすと、高いのもあるのですね。いままで400円のを使ってましたが、1000円のもある。値段は約2倍。それだけの価値があるのでしょうか。試してみようということで、デザインは少し妥協しつつ、新しい銘柄とレジに直行しました。使ってみた結果、違いは歴然でした。ヌメヌメが長持ち。一夜にして、荒れ放題の田畑をすっきり開墾してくれました。この働きもの。リップなどどれも同じだと思ってましたが、そうではなかったと。下手な商品レビューみたいで、ごめんなさい。大の男がリップの話をしています。「400円から1000円のに変えたら断然効いたよ」とか、どうでもいい話なんです。でも、こういうちょっとした感動をリアルタイムでつい伝えたくなってしまうのが書き手なのです。

モノの値段、特に化粧品の値段ほど根拠のないものはありません。1000円で販売したら売れなかったので、パッケージのデザインを変えて5000円にしたら10倍も売れるようになったケースがありました。中身はまったく同じ。でも、「高い方が効きそう」というユーザー心理をうまくついてるわけです。で、実際にプラシーボ効果もあり、「効いたかも」という人が出る。それでリピートされるというしくみです。化粧品は、こういう魔法がまかり通りやすい商売でした。そういう裏側を見ていたので、単純に「高いものが効く」とは思っていません。

でも、今回はやられちゃったな。2倍の値段出した価値はありました。高いだけのことはあった。ここで銘柄をいうか迷ったのですが、ステマと思われても嫌なので知りたい人は個別に聞いてください。まあ、ぼくに効いたというだけで、あなたに効くとは限りませんが。「安物買いの銭失い」とよく言われるように、安くて高品質はありえません。でも、高いからといって必ずしも高品質とは限らない。ここが難しいところ。自分なりの目利き、買い物哲学が必要ですね。

 

(約1080字)

Photo: Martin Fisch

 

 


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。