道楽が文化をつくるのだ
「出版は文化だからね、ビジネスとしては成り立たないよ」
「出版社はお金が有り余っている人が道楽でやるものだ」
そう先輩方に言われます。けれど、ぼくは出版をやりたい。お金が有り余っていなくてもできる方法はないだろうか。
ブレイクスルーのヒントが欲しければ、他業界を参考に、とはよく言われること。出版業界の未来を考える時に、チェックするのは、海外の音楽業界。数年先に進んでいるから、その状況を研究することでこれから起きる出版業界の変化も読める。大資本から派手な宣伝にのせてメジャーデビューをしなくても、マイペースで楽しそうにやって食えている人たちがいたりするのです。
歌のような道楽で食べていくというのは最も難しい職業のうちの1つ。カラオケ産業が成立するくらいです。お金を払ってでも歌いたい素人さんがこんなにいる。そんな中、逆にお金をもらいながら歌える人というのはどんな人なのでしょう。メジャーレーベルからデビューできるのはほんの一握り。歌がうまいのは当たり前で、容姿も魅力的でなければなりません。競争がものすごく激しい。しかも仮にメジャーデビューしたって、活躍し続ける人は100組に1組。 出版もそうで、絵を描くのは道楽だし、これだけみんなブログをやっていて、文章を書いたりポエムをつづる。100万円を積んでも自分の自伝を出したいと自費出版サービスを頼む人さえいる。音楽にしても出版にしてもこういう道楽でお金をもらうというのはなかなか難しいとは思う。けれど、工夫をすればいろいろできる。そういう面白い時代になって来た。
楽しそうに上手くやっているなと何年も前、スタート時から注目している1つのパターンが Alex Goot や日本では goosehouse の手法です。
1.定番ヒット曲をカバーし、YOUTUBEでアクセスを集める(ここで広告報酬が発生・プレイヤーの表現スキルもアップ) ↓ 2.ファンを増やし育成する ↓ 3.気の合うアーティストとコラボする ゆるいグループをつくる ↓ 4.オリジナル曲を出して、ファンに提供する(ここで楽曲&グッズ売り上げが発生) ↓ 5.グループでもソロでもやれるアーティストに |
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【参考資料】
メジャーのヒット曲 Taylor Swift – 22
上記をAlex Goot がカバー(仲間たちとコラボしている)
賢いやり方ですよね。無名のアーティストがいきなりオリジナル曲を歌っても膨大な情報の海の中で見つけてもらうまでに時間がかかってしまう。それまでに資金が干上がってしまうケースが多い。 テレビなどマスメディアに登場しなくたって、大資本がバックになくたって、コネがなくたって、無名のアーティストがどうやって食えるようになっていくか。プロになっていくか。このやり方はあなたの業界でもきっと応用できるはずです。詳しい解説は省きますが、各自あたまをつかって考えてみてください。 他にもいろいろなパターンと方法があります。
いまは独力でできることも大きいですが、みんなでわさわさ絡み合い共生していく時代だなと思います。メジャーもインディーもあいまいになりました。むしろ可能性を感じるのは、インディーの方です。自由大学もインディーズの学校だし、オーディナリーもインディーズの出版社です。この界隈には、有名無名問わず面白い人が集まってくる状況がある。個人ではなく、界隈全体で盛り上がっていく。
大事になってくるのは、表には見えないけど新しい売り方を考えられるプロデューサー、キュレーター、編集者の存在。あとプレイヤーたちは、個人として前に出れるし、裏に回ってグループを支えられる両方のバランス感覚が必要です。 いままで成立しなかったような職業も工夫をしてなんとか食べられるようにしていく。しかも魂を売らずに。ぼくの役割は彼ら小さな表現者たちの魅力をしっかりと伝え、さらに活躍する土壌を耕すことなのです。