「海風が強いから落ちてしまうのですか?」「いえ、木が自然に落とすのです」旦那さんによると、実がたくさんなりすぎると、木が自らの判断で落としてしまうのだそう。木自身に負担がかかりすぎないよう、自分で判断しているのだ。
ぶらり旅シリーズ
無農薬レモンはひと粒の宇宙だ.
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コアな読者に好評な「ぶらり旅シリーズ」。1月中旬、寒空の下ではありますが、今回は「レモン狩り」です。前々から、中村真美さんが「レモン狩りってやってみたいんですよねー」と言っていたので。オーディナリー編集部は、神奈川県は真鶴(まなづる)町までやってきました。
レモンといえば、瀬戸内海あたりが有名ですけど、関東でもあるのですね。今回はレモンの中でも、無農薬にこだわってつくっていらっしゃる農家さんへお邪魔しました。
無農薬レモンとは 農薬(防カビ剤、土壌改良剤、除草剤、ワックス等)を一切使っていないレモン。安心して皮までまるごと食べられる。果汁の量も香りも、普通みるレモンの2倍くらいある。 |
レモン農園に到着です
山道を迷いながらも、グーグルマップを頼りに、「ここらへんのはずなんだけど… 」。
農園らしきものも、建物も見えないし、外からでは何なのかわかりません。ゲートの脇にあるインターフォンから声をかけると、「お待ちしてました! いま向かいますので、お待ちください」
農園オーナーの奥様(左)がゲートを開け、中へ案内してくれます。
「ほほおー、どこにレモンの木があるのだろう?」 見渡す真美さん(右)
「あった! レモンがなってるよ」興奮する一行に
「ようこそ、いらっしゃいました。この木なんかはよくできてますよー」旦那さんが案内してくれます。
レモンは手でもげない。枝にかたくついているので、ハサミを使って収穫します。高枝バサミと手持ちバサミ。
普段スーパーでみるレモンとの違いは、「皮が厚そうな感じと、形がイボイボしているなど整っていないところかなぁ」
深井さんは大きいのを狙います。レモンの木にはトゲがあって、痛い。
「これなんか良さそう」
パチン!
切り口からレモンの芳醇な香りが広がります。レモンとの付け根ギリギリで切ることで、香りが出やすくなるそうです。
「味を想像しちゃって、酸っぱい顔になるね」
真美さんは小さい種類のレモンを観察します。「どれがいいですかねー」
「この2つのコンビ、可愛くてすごく気に入ったんですけど、まだ青いですかね」
時間をかけてじっくり選びます。スーパーでみるレモンよりも、粒ごとに個性があるので迷ってしまいます。
「よし、あれだ! 」 高いところのレモンを収穫。ボトリと下に落ちますが、レモンは固いし、土は柔らかいので大丈夫。
ひとつ目、ゲット。ふむふむとよく観察します。
枝が少しついているので、二度切り。根元ギリギリで切ると…
「うわー、芳醇! 香りますねー 」
たくさん下に実が落ちています。レモン以外にもみかん、ゆずなどたくさんの柑橘の種類があるのですが、熟れきっていない実まで落ちているのが不思議。
「この辺は海風が強いから落ちてしまうのですか?」
「いえ、木が自然に落とすのです」
旦那さんによると、実がたくさんなりすぎると、木が自らの判断で落としてしまうのだそうです。木自身に負担がかかりすぎないよう、自分で判断しているのだとか。
「あっちの木を見てみようかな」レモンと言っても、大きい種類小さい種類いろいろあります。
ほら、倍くらい大きさが違う。
「いくつくらい採る?」
「そうねぇ、友達にもあげたいから、多めに採ろう」
農園は広い。しかも山の斜面にあるので、坂をよくのぼる。平地より体力が必要だ。
では収穫したレモンを見せてください
寒くなってきたので、この辺で終了。
「大きいのを採りました」
「良い香りですよー」
当然、無農薬はつくるのが難しい。『奇跡のリンゴ』の話もあるけど、レモンもやっぱりそれくらい大変なのだろうか。旦那さんによると
「うーん、大変ではありますが、リンゴのほうが難しそうに思います」
海の見えるテラスで休憩。オーナー夫婦は東京からこちらに移住してきたそうで「都会はもうたくさん… と思ったんです」
採れたてレモンを、味見してみたいでしょう?
海を見ながら、レモン果汁とお湯だけのホットレモンをいただきます。
「うーん、濃い感じがする! 酸っぱいというより、濃厚」
潮風に当たって育ったため、ほんのり塩気を感じます。種以外、皮までいただきました。疲れがたまった体には、クエン酸がきくのです。のどの痛みや風邪の予防にも。
お友達にあげるように、包んで持ち帰ります。
「今日はありがとうございました! 」
農薬の力ではなく、大地、太陽、海風の力をたっぷりと吸収したレモンは、ひと粒で宇宙そのものと言えそうです。
ここからは番外編「海まで歩いてみようよ」
目的であるレモン狩りが終わりました。農園を後にした一行は、海が見えるので「海まで歩こうよ」ということに。
すぐそこに見えるから近いと思ったら…
これがけっこう遠い。まあ、そういうものです。ふぅーふぅー、息を切らして歩きます。「この森を抜ければ海が見える」
途中で道がなくなり、道なき道をずんずん進む。波の音のほうへ、直感で。
あ、あれ? 深井さんを見失いました…。「おーい、どこだー! 」
「深井さーん、どこですかー! 」 冬でも咲いている花はけっこうあるものだ。
「どこですかー! 」 ようやく森を抜けて… ここを降りれば海かも。
視界がひらけ、「海が見えた!」 …でも、深井さんの姿は見当たりません。
「どこですかー! 」 岩場の陰も探します。
「いないですね… 」
「まだ森で迷ってるのかな… 」
「んっ! これは… 」
なにか深井さんの気配を感じます。石の上にいい感じの貝が。
「あ、これも! いい感じ」
「な、なにか人魚みたいのがいる! あれ見て」
「え、どこですか?」
でーん。深井さん、先に着いて休憩してました。
「この辺は、いい感じの貝があまりないね… 」
気になる石を少し拾って、「おなかがすいたのでご飯を食べましょうか」
せっかくので地元のお魚をいただきます
この辺は漁港なので、「やっぱり魚ですかね! 」朝からみかんしか食べていない一行は、おなかペコペコです。
地元の魚屋が経営している料理屋に入りました。
「やっぱり美味しいね、コリコリしてる」刺身や焼き魚、いかの塩辛をいただき、帰路につきました。
さあ、次はどこに行きましょうかねぇ。(了)